十話 学園
久しぶりに投稿してみました
今回の話は、次話につなげるための物なので、短いうえにつまらないと思います。それでも見てくれる方はどうぞ。
「「学園?」」
もうすぐ年も変わろうか、という時期に聞かされたのはクリスにとっては――アリスはある程度予想していた――まったく予想もしていないことについてだった。
「そうだ。二人も来年には9歳になるだろう。だからそろそろ学園に通わせてもいいだろうと思ってな」
クリスとアリスの父親であるロイドはそう言うと自身の書斎に置いてある、この辺り一帯の地図を引っ張り出してきた。
ロイドはその地図をクリスとアリスの前に広げると、地図上を指でさした。
「今私たちが住んでいるのはここ、ハスバーの城下町だ。ここから馬車で西に2日ほど行くと、学園都市と呼ばれるルーズベン王政都市という巨大な都市があるんだ。そこには各国からたくさんの子供たちが集まってきて、魔法師や騎士、商人、鍛冶師などについて学ぶんだ」
ロイドはやや早口にそう言うと、机に置いてあった、すでに冷めてしまっている紅茶をグイッと飲み、一息ついた。
「本当だったら二人には騎士になってもらいたい、というのが親心だが、二人は頭もいいし魔法もすごく使える。だから二人には考えてもらいたいんだ。将来何になりたいかをね。
あ、もちろん学園に行かずに今まで通り私とリファに剣と魔術を教わる、というのも一つの考えだ」
「…少し考える時間をください」
クリスはそう言うとアリスを連れて自分の部屋へと戻っていった。ただ、その眼は期待の輝きに満ちていたことをロイドは見逃していなかった。
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部屋に戻ったクリスは、早速先ほどロイドに話された話についてアリスに話すことにした。
「アリス! 学園だってよ学園! 俺たちが地球にいたころにあんなにも夢に見ていた【異世界】の【学園】だぜ!」
「落ち着いてください兄さん……じゃなくて姉さん。嬉しいのはわかりますが、また男口調が出てきてますよ」
「おっと、いけませんわ」
アリスに注意されて慌てて口調を戻すクリスだったが、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに再び早口で話しだした。
「でも学園ですわよ学園! 勝気なライバルに優しそうな生徒会長! あとは謎の生徒に武術大会なんかもあるかもしれませんわ! あ~、楽しみ!」
期待に目を輝かせる姉の姿を呆れた表情でアリスは見ていたが、内心では自分もまだ見ぬ異世界の学園というものに期待をしているということに気づいていた。
「では姉さん、学園の件は正式にお父様にお願いするということでよろしいでしょうか?」
「うん!」
屈託のない笑みに思わず身じろぎするアリス。
(いけませんわ。あんなに屈託のない笑みを見せられたら襲いかかってしまいそうになりますわ。…今は鼻血を出さなかった私を褒めてあげたい気分です)
そんなことをアリスが考えているとは露ほどにも思っていないクリスは、いきなり身じろぎしたアリスを不思議そうに見ていた。
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クリスが考えさせてくれ、と言ってから十分も経たないうちに部屋から出てきたことに内心驚いたロイドだが、そのことを感じさせないような真剣な表情でクリスとアリスに問いかける。
「どうだい、学園のことは決まったかい?」
「はい。…私たちを学園に通わせてはもらえないでしょうか?」
「うん、そう言うだろうと思っていたよ。これがルーズベン王立学園のパンフレットだ。じっくりと読むといい。それから、願書は明日私が出しておくから心配はしなくていい。…それじゃあもう夜も遅いし部屋に戻って寝なさい」
「「はい、おやすみなさい」」
そう言うと、クリスとアリスは学園のパンフレットをわきに抱えて部屋に戻っていった。
最後まで見てくれてありがとうございました!




