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魔剣戦記~異界の軍師乱世を行く~  作者: 藍藤 唯
エル・アリアノーズ戦記 1
8/81

ep.6 森の少年賢者



 腐っている。彼女は王宮内で、そう呟いて止まなかった。目先の利益しか見えない重臣。伝統に囚われて改革の出来ない愚王。私利私欲を尽くす家来。

 十六になれば、政略結婚の駒にされる。どれほど優秀だとしても、女の身である自分に、愚王は見向きすらしない。

 ならば、変えてしまえ。この国を救うのは自分である。この腐った国を、己の手で変えてやる。

 齢十四になった彼女は、自ら辺境の土地の領主を望む。

 それが、革命の始まりだった。

                 エル・アリアノーズ戦記 序章より抜粋







 二か月前から、この小さな城は賑わいを見せ始めていた。

 中央よりも行き渡った設備。安い税。商人の優遇。


 北アッシア城と呼ばれる小さな城は、順調に力を付けてきていた。


 城内、執務室。一人の少女が、静かに政務をこなしている。

 齢十四にしてこの城の主となり、この城を豊かにしている原動力であるアリサ・ル・ドール・アッシア王女であった。


 王宮に居る間は伸ばしていたその美しい銀髪は、政務の邪魔だとばかりにばっさりとボブカットに切り落とし、口元から覗く八重歯もまた王女らしくない力強さを見せている。

 瞳の色は、ルビーもかくや、美しい紅。

 そしてその年齢と身長に似合わない、整ったスタイル。最近は、身長と胸のサイズが釣り合っていないことが悩みだとか。


「……ふぅ。こんなものね」


 涼やかなアルト。一息ついたアリサは、筆を置くとずっと握っていた右手をぶらぶらと振るう。

 しばらくの間そうしていたものの、窓枠の外で太陽の位置がだんだんと真上に来ていることに気付き、美しい所作で立ち上がる。

短くなった銀髪をさっと払い、竹簡の山を籠に移す。


「だれか、居る?」

「はっ!」


 さほど大きくもない、その涼しげな声。呼応するように一人の兵士が執務室へと入室する。

 アリサはその兵士に竹簡を運ぶよう命じ、朝から通しで行っていた仕事が終わったことに安堵した。


「そういえば、今の人もここで雇ったのだったか」


 ふと、思う。

 アリサを慕う人間は、この街ではとても多い。

 それこそ、街中を歩くだけで様々なところから声がかかる。

 感謝の気持ちを伝えられるのはとても心地の良いもので、……逆に、今までその声を聴いたことが無いということも理解していた。


「相変わらず、王宮には良い思い出が無いわね」


 窓枠の外、騎士たちの練兵に励む姿を眺めながら、アリサは一人呟いた。


 自身の味方は、殆どがこの城や、ここに到るまでの道中で加わった者達。

 信頼も置けるし、実力は認める。だが、王宮に味方が居ないというのは、情報面の意味でも厳しい。


 王宮内でアリサに向けられていたのは、嫉妬や羨望の瞳だけだった。

 彼女の母は、市井の娘。王が母に欲情し、権力のままに犯された末に出来た娘が自分であった。

表向きは側室の御子。だが、泥棒猫の娘、というレッテルを貼られ、なおかつ母は正室に毒殺された。

 齢十の当時、王に助けを求めて泣き喚いたが、王自身が彼女を政略の駒としか見ていないことに気付いて絶望する。その後、母の無念を憂いて国に尽力しようとして……腐ったこの国の現状を知った。


「……まあ、あんな佞臣共の味方が居たところで……っていうのはあるけれど」


 窓枠に頬杖をついて、ほぅ、とため息を吐く。

 王宮の重臣たちを思い気分が暗澹たるものになった。

 腐敗した国家。いくら南側に天然の要害があるからと言って、このままではアッシア王国は滅んでしまう。


 王宮内の愚物はどうなっても構わない。

 それでも、戦火の中でアリサの愛する民が苦しむのはイヤだった。

 どうにかしないと、と考える。

 どうにかして、自分が頂点に立って善政を敷くべきだ。


 そう、覚悟を決めていた。

 だがそれには、圧倒的に力が無い。権力も、富も、兵力も。

 今は、自分一人で頑張るしかないのか、と再度ため息を吐いた。

 と、窓枠目下の練兵場が目に入る。


『オラオラァ! もっと根性見せろ! そうだ根性だ! 血が足りなくても根性があれば人は生きていけるんだ! 兵士としての根性を見せてみろよぉおおおおおお!』

「「「「「……お~!」」」」」

『そんなんで我らが愛するアリサ様を守れるとでも思ってんのか! さあもっと根性だ! 根性! 根性! 根性! 復唱!』

「「「「「根性! 根性! 根性!」」」」」

『よぅし! 休憩!』

「「「「「いよっしゃああああ!」」」」」


 そんな声に一瞬目を丸くして。

音頭を取っていた一人の男が目に入り、アリサはクスリ、と上品な笑みを漏らした。


「そうだ……私にはあのバカ共が居る」


 思わず、顔を綻ばせた。

 自分の目的を話した時。


『なら根性ある兵士が居れば問題ないな!』


 と朗らかに言い放った、元義賊の大将。国を憂いて、か弱き民草の為に貴族襲撃を繰り返していた彼を、褒められこそしないが否定することなどできなかった。


「根性バカのガイアス、常在戦場のグリアッド……大事な私のバカ共(仲間)が居るじゃない……」

「ん? 儂は加えてくれないのか?」

「ちょっ!? く、クサカ! 居るなら居ると言いなさい!」


 真後ろで聞こえた渋い声に、アリサは飛びあがる。

 慌てて振り向くと、涙目で男を睨みつけた。


 小柄なアリサが、見上げなければ顔を合わせられない屈強な男。

 巨躯、と言っても差し支えないような体格を持つ、髭面の男がそこに居た。

 アリサが唯一王宮内で心を許し、彼もアリサから片時も離れなかった、アリサにとっては最古参の部下であるクサカである。


「ガッハッハ! 冗談だアリサ。お前の中ではちゃんと儂も仲間に入っていると信じている」

「……フンだ。入れてやらない」

「それは酷過ぎるぜ御嬢さん!?」


 ざっくりと角刈りにした、黒い髪。精悍な髭面の男が、年端もいかない少女に拗ねられてあたふたしている様子は中々に珍妙で。

 自然と、アリサも笑みをこぼす。


「ふふ、もう。それで、どうしたの?」

「人材を探せと儂に命じておいて、その言い草は何なんだ……」


 がっくりと肩を落としたクサカという男は、竹簡をアリサに一つ手渡した。

 差し伸べられたそれとクサカを交互に見たアリサは、一言呟く。


「私が今欲しいのは……分かってる? もう貴方の見込んだ武官なんて人間を好待遇で迎えるほどの予算は無いわよ?」

「……辛辣だの。まあ良いわ。さっさと開けい」


 竹簡を開くアリサ。そこに明記してあった人材の情報を見た彼女は、次第に目を丸くする。そして、バッと竹簡を執務机に叩きつけた。


「な、なんじゃ!? 気に入らなかったか!?」

「変な老人言葉は止めなさい。クサカ、ガイアス……は練兵中だから、グリアッドを呼んで。護衛を頼むわ。すぐに行くと伝えなさい。寝てるだろうからたたき起こして」


 掛けてあった上着に袖を通した彼女は、唖然とするクサカを置いて執務室を出ていく。

 呆けていた彼だったが、すぐさまニヤリと笑って。


「これだからお嬢の許は離れられんわい……それにしても、お嬢が政務やっとるのに部下が寝とるとは何事だ。斬り起こしてくれる」


 くっく、と声を漏らしながら、彼女を追うように廊下へと出て行った。



――在野 北アッシア地方 夜獣の森近くの村

  名前 リューキ(聞き込み情報のみ)

 男性 十六歳(推定)

  森の少年賢者として村からの信頼も厚く、現在村を盗賊から守った回数は五回。いずれも村人に死者はなく、村も不可思議な要塞と化している。

  村人の情報では、ふらりと現れたかと思えば一人の少女と協力し、五十対二でありながら盗賊を全滅に追いやった賢者とのこと――




『私には貴方という剣が居る。ガイアスという右腕が居る。グリアッドという左腕が居る。足りないのは、頭脳。私と軍略で対等に話せる参謀を探しなさい』


「ドンピシャだろう? お嬢」












「ふわぁ~……きっつ。クサカさん怖すぎ……。で、あ~ちゃん、どこ行くのさ」

「夜獣の森近くの村よ……あとあ~ちゃんって呼称はやめなさいよ」

「今、昼だぜ? いいじゃん可愛いし」

「誰が夜獣に会いにいくと言ったのよ!? ……ま、言っても変わらないのは分かっていたけれど」


 馬匹を並べて、草原を駆ける二つの影があった。


 一つは少女。愛らしさと幻想的な美しさを兼ね備えた、凛とした雰囲気の銀髪少女である。

 もう一つは、角刈りの金髪に眠そうな細い眼をした青年。軽装に身を包み、腰に佩いているのは多くの短剣。飄々とした雰囲気を振りまく、元盗賊の青年であった。


「ふ~ん……まあそんなに遠くないし、いっかぁ。あ~ちゃんの人材探し?」

「そうよ」

「また武官? もう良くね?」

「軍師よ。もし噂が本当なら、かなりの実力の、ね」

「げ……僕堅物って嫌いなんだけどなぁ」

「……なんで軍師と堅物が結びつくのよ」


 そんな軽口を叩きつつ、彼らは進む。

 草原はいつの間にか草の高さを高くし、自然と森へ変わっていった。


「ここが夜獣の森なの?」

「間違いないね~。獣たちの匂いがプンプンするよ。魔狼に、ホーンベアー、ブラッドスネーク……うは、危険地帯にもほどがあるよ! 帰ろう!」

「……貴方の索敵は異常よ。でも、夜獣の森、というだけあって夜しか彼らは出てこないみたいね」

「不思議だよね~。この道真っ直ぐ行けば、その村に着くと思うよ~」


 欠伸をもう一つかまして、グリアッドはそう言った。

 緊張感の欠片も無い彼にアリサはため息を吐くも、これが彼の性分ならばということで目を瞑っている。


「それにしてもあ~ちゃんって優しいよね~。普通僕みたいな部下許さないよ?」

「自覚はあったの? でも私は、優秀で且つ貴方みたいに私に尽くしてくれる部下を束縛したりはしないわ。こう見えても、人を見抜く才はあると思うわよ?」


 馬上で胸を張るアリサに、グリアッドは内心嬉しく思っていた。

 この少女は、人の扱いが本当に上手い。であればこそ、グリアッドやガイアスも盗賊から足を洗って彼女についてきたのだ。その忠誠には、一点の曇りもない。


「あ~ちゃん、そんなに胸を張ると、馬上だし自慢のおっぱいがたゆんたゆんだよ?」

「ばっ!? あ、あああアンタは本当にいい!!」

「はいはい、そろそろ森に着くからね~」

「……絶対使い潰してやる」


 隣でアリサが恐ろしいことを呟いていた気もしたが、それも含めてグリアッドは楽しんでいた。

 彼女の許で戦えるなら、死んでも本望。

 そう思えるだけあって、軍を預かるはずである男を見極めることには本気になろう、とも考えていた。


 一瞬の光を経て、森が開けた。

 そこにあったのは……要塞だった。


「な、何よコレ」

「……要塞だね~。ちょっとヤバいかもよこれ」


 彼女たちの目の前に現れたのは、アリサの倍はあろうかという高さの外壁。木を骨組みにしてその上から泥か何かを被せて固めたのであろうが、形が不自然である。

 上方に行くにつれて、手前に傾いているのだ。


「……なるほど、外壁に上りにくくしてあるんだね」

「……このところどころ空いている穴は?」

「……分からないけど、とりあえずは入らない? 門はあっちにあるみたいだし」


 二人で首を傾げつつ、外壁の周りを馬でゆったり進んでいく。

 こんな小さな村に、ここまでの防衛をする必要があるのかどうか。少し考えてみても思い当らない。

 だとすれば、その賢者の知恵なのかもしれないと推測する。

 村人たちにとっては、村自体が宝。であれば納得できる。


「……少年賢者、か」

「まだ分からないよ? っと」


 門の前に立つと、数人の番兵らしき人間に囲まれる。

 アリサとグリアッドは下馬して、身分証明にもなる割符を取り出した。


「この方は北アッシア領主にしてアッシア王国第二王女、アリサ・ル・ドール・アッシア様である。この度はここに住んでいるという少年賢者にお会いしたく村に来た。通せ」


 グリアッドの口上に、番兵たちは顔を見合わせて。

 二人を止めると、慌てて村の中へと引き返していった。


「……これが、村? しっかりしすぎてない?」

「そうだね~……さすがに興味が湧いてきたよ~」


 しばし待っていると、門番が一人の老人を連れてきた。

 この老人、老いていながらも気丈な瞳をこちらに向けており、アリサはともかくグリアッドは気圧された。


「この村の村長でございます。この度はこのような辺境の村にご足労いただき、感謝の言葉も出ません。さぁ、何もないところでございますが、よろしければ我が屋敷へ」


 頭を垂れる老人に、アリサは頷いた。

 開かれた門を、通り抜ける。その内部は、彼女の想像以上に栄えていた。

 まず、道が整備されている。畑も区画ごとに分けられ、村人たちの服装も小奇麗。さらに言うなれば、彼らの表情は活気に満ちていた。


「もうちょっとそっち! 違う! そこにそれ!」

「そうそう、こうやって耕すんだ」

「ようし、休憩だ。頑張ったな」


 道中、アリサは活気づいた街並みに感嘆する。発展途上でこそあれど、聡明なアリサにはこの村がどんなに強くなっていくか、手に取るように分かったのだ。


「こんなに……これが一つの村? 人口だって凄いじゃない」

「この一年、流民をかき集めましたからな……」

「流民を?」


 道案内をする村長が、振り返ってにこやかな笑みを見せた。

 首を傾げるアリサとグリアッドに、淡々と説明をしていく。


「食糧があって、安全な場所。そこに流民は居着く。その両方を作るからと、リューキが村の者を連れだって呼び込みにいったのです。既に一年前の五倍以上に膨れ上がっておりますぞ」

「……そんなに集めて、治安は?」

「働かざる者食うべからず。最初の食糧は元々の村人たちのモノだったのですが、しっかりと農耕に携わったり、工事に汗を流す人間に優先的に与えられた。女子供は調理や武器の制作に従事する者も多くいましたのでの。そして、自警団を元村人たちで結成し、リューキは村の法度を作り。そういう風にして、この村は一年で大きくなりました」


 アリサの表情は終始真剣だった。

 確かに、ここに移住したい流民のニーズを叶えた上で、この村の豊かさに貢献させている。なるほど、このループならばすぐにでも……。


 少年賢者に、さらなる希望が見えたアリサだった。






 村長の邸宅は、そこまで遠いところではなかった。村の中央(・・)に建てられた大きな家で、二人は客間に通された。


 一人の少女が、行儀よく彼らの前にお茶を置き、すぐさま立ち去った。

 その間数瞬という早業にあっけに取られたアリサとグリアッドだったが、村長の声で我に返った。


「粗茶ですが」


 村長自身が一口飲んだ後で、アリサも進められたお茶に口を付ける。

 と、目の前に座る村長を見据えた。


「……この村は、本当にたった一年でこうなったの?」

「こう、とは分かりませんが……こうして皆が活気を持って暮らしていられるのは、全てリューキのおかげですな」

「リューキ……やはり森の少年賢者……」

「ほう、ご存じで?」

「えぇ、彼に会うために、私はここに来たのだから」

「なるほど……良い目を持っておられるな」


 じっと、アリサを覗き込む村長。ついで、にっこりと笑った。


「彼を、どうなさるおつもりで?」

「できることなら、私の力になって欲しいわ。この腐った国を変えて、優しく豊かな国を作るための、ね」

「優しく、豊か……ですかな」


 興味深そうに、口元を緩める村長。

 その様子に、目を丸くしたのはグリアッドだった。

 アリサの後方に立つ彼は、村長の笑みを知っている。あれは、その意味を理解した上で興味を示している瞳だった。


 アリサ王女が王宮でどんなにそれを実現しようと奔走しても、見向きもされなかったこと。出来る筈がない、または意味が分からないと一蹴された……その話は、グリアッドも聞いている。

 そして、グリアッドですら、どう言った方法を取るのか分かっていない。


 だと言うのに、この村長はこの対話だけで理解した。……いったい何者なのだろうか。


「実現するために、どれほどの犠牲を払うか、分かっておりますかな?」

「……それを少しでも少なくするため、彼を引き抜きに来たのよ。まあ、彼がそれに値するかは、分からないけれど」

「ほぅ……」


 面白そうに、村長は目を細めた。

 訝しげなアリサの紅玉の瞳は、そんな村長を貫く。


「何が、言いたいの?」

「いえ、滅相もない。その誇り高い夢、この老骨も応援しておりますぞ」

「……そう」


 食えない男だ。苦い顔をして、アリサはそうため息を吐いた。

 と、そこに先ほどの少女が戻ってきた。……天井から。


「リューキ様は、現在この村には居られません」

「……ふむ。では家かの?」

「……分かりかねます……リューキ様のご自宅へ入るなど……その……」


 先ほどの普段着と違い、黒い装束に身を包んだ少女は何故か頬を赤く染めて首を振っていた。そんな彼女に、村長はため息を吐く。


「分かった。しばらく待つとしよう……と、王女様。リューキは現在、別の場所に居るらしいのです。呼び出しますので、少々ここでごゆるりとしていていただけませんか?」


 アリサはと言えば、突然屋根から現れたその黒装束の少女に目を丸くしていたのだが。

 村長の声に我に返ると、微笑んで言った。


「私が欲しくて、わざわざ来たの。だったら呼び出すのは間違ってるわ。そのリューキの家に行くから、場所を教えて」


 立ち上がるアリサに、村長は急に笑い出した。

 グリアッドが短剣の柄に手をかける。アリサはそれを制して、村長を見やった。


「ハッハッハ……いや、失礼した。確かに、こんな辺境にいらっしゃる時点でそういう御仁なのは分かっていたことか……。ならばよし。ファリン、地図を」


 すっと、黒装束の懐から布を取り出す少女。それを受け取った村長は、アリサにそれを手渡して。


「ここが、現在地です。リューキの家は、その森の中にある邸宅。ぽつんと立っているので、すぐに分かるかと」

「ありがとう村長」

「いえ……リューキも、中々面白いお方の目に留まったようだ……」


 くつくつと笑う村長に、グリアッドは訝しげな視線を崩さなかったが。

 この頭の回転が早い村長に、アリサは嫌なものを感じなかった。それ以上に、このまま彼を引き抜くのもありではないかとも考えた。


「ふふ……リューキという男がもし見込み違いだったら、貴方でも良い気がしてきたわ」

「ご冗談を……リューキの才と比べられるなど、無駄に歳を食った自分が恥ずかしいですからの」


 そう言って、村長は再度愉快そうに笑った。


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