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魔剣戦記~異界の軍師乱世を行く~  作者: 藍藤 唯
エル・アリアノーズ戦記 3
40/81

ep.38 酔えぬ美酒(中)

作者的に納得のいかない部分があるけれど何が納得いかないのか分からないのでわかり次第改稿予定です。


その際には必ず最新話で告知しますが、ストーリー上は全く関係ありませんのでご了承ください。

「なっさけねぇなあ、俺ぁ」


 赤い斧の集団、その援軍にあってたった一人だけ、安堵は違う感情を持った男が居た。


 自慢の直剣を一つ振るうと、悔しさに表情を歪ませる。

 自分が居るにも関わらず苦戦した。もっと出し惜しみせず力を振り絞るべきだった。


 彼以外からすれば、彼は全力で戦っているように見えたに違いない。しかしながらそれは彼にとってはただの100%の力であって、全力などという必死の結晶とはかけ離れたものだった。


 いわば、そう。120%の力。人が出し切れる限界を越えた力こそが、全力。


 彼は、そう考えていたからこそ、100%の力だけで戦っていた自分を憎む。


「オーバさんに顔向けできたもんじゃねーな、こりゃ」


 脳裏によぎるのは一人の男。

 グリアッドとともに居た義賊、その頭。

 自らを救ってくれたその人に、情けない姿など見せられやしない。


 アリサ、竜基、グリアッド、ライカ。


 敬愛する主君に、一目置く軍師、幾度死線をともにした仲間、そして、大事な後輩分。


 それぞれには無い力が自分にはある。

 だからこそこうして前線を任されている。

 だというのに、情けない。


 戦線が崩されるのを必死で防衛する、たかだかその程度しかできない人間ではないはずだ。

 己を叱咤する言葉が、胸の中で騒ぎ立てる。


「っは! ここで戦ってるだけが能じゃねーわな!!」


 拳を握りしめて男は・・・・・・ガイアス・ベルザークは咆哮をあげた。


 同時に掲げる直剣は、意志に同調するかのように大きく魔力を解き放つ。



「へっ!! どんなもんだってんだよおおおおお!!」


 風が踊る。渦となって巻き起こる。

 台風の目に居るは、暴風を操る北アッシア最強の魔剣使い。


「まだまだあ!!」


 空気で作る巨大な球。

 この風圧の中で、さらなる数の暴力が王都の兵士を襲っていく。

 上空から降り注ぐメテオのように、飛来する風球はとどまるところを知らず王都陣営を混乱のどん底へたたき落とす。


「この風の魔剣使い!! ガイアス・ベルザークの居るところ!! 数多の敵兵といえど誰一人として通り抜けることは許さねぇ!!」


 細き直剣を振りかざす。

 まるでチェーンソーのように空気が唸りを上げて周囲を渦巻き、それが次第に巨大化する。


「風雲・天地開闢の剣!!」


 天まで届かんと突き上げる木枯らしを、剣に見立てて振り下ろす。纏う風に掠った木の葉がたちまち微塵と化すその恐ろしい風剣は、天と地を分けるがごとく爆発的な威力をもって大地を粉砕した。


「ぎゃああああああああ!!!」

「おおおおおお!?」


 断末魔が巻き起こる。その天剣の直下に居た人間が助かることなど叶わない。加えて剣の周辺に居た兵士たちは、ところ余さず吹き飛ばされた。


「っしゃああ!!」


 地面にたたきつけると同時、風ははじけるように霧散する。その勢いに任せて剣を振るい、ガイアスは魔剣を肩にかけた。


「っは!! ざっとこんなもんってところよ!! 軍師が許可出してくれりゃあ、すぐやったんだけどな・・・・・・ぁぁ、疲れる!! 心地良い疲労だ!!」


 こきこきと、肩を鳴らすガイアスの目前には。断層でも起きたのかと思うような割れた大地のほかには何もなかった。


 ガイアスの力によって、800以上もの兵士が一瞬にして塵に還ったのだ。


「あ~、いい根性試しだ!! まだだ、まだやれるぞ!!」


 魔力がほとんど持っていかれる大業の許可が出たこともあり、ガイアスは一人清々しい笑みを浮かべてから、もう一度駆けだした。

 周囲一帯が無人と化した大地を、慌てて退却する敵軍に向かって。







 正面に構える突出した部隊を叩こうと、反転した王都兵たちは死にものぐるいで赤い斧の集団に襲いかかった。

 反転という戦術のリスクが高いことくらい、兵卒以上の人間は皆分かっていたのだ。

 だからこそ一般兵に命じ、なんとしても目前の敵を突破しろと怒鳴り散らす。


 勢いこそあれど、こちらの後方を叩いていたからこそ強かった村の義勇兵にとって、王都軍の真っ向勝負はごめん被りたいもの。


 村長はすぐさま意図を察し、敵軍を抜かせても構わないから上手くいなして追い打ちに集中するよう指令を出す。


 そんな時だった。


 王都軍の後方で、火を抱かぬ爆発が起きたのは。


 まあしく暴風とでも言うべきその一撃が、まだ戦い抜くべきと考えていた後方の殆どを蹴散らしてしまったのだ。



「どういう状況だこれは!!」


 退却中の将校が吼えた。後発だった一個連が、きれいさっぱり吹き飛ばされたのだ。

 いかに魔剣使いといえど、たった一撃でそんな力を出すような者はなかなかいない。背筋に走ったのは紛れもなく寒気であった。


 アリサ王女はとんだ化け物を飼っている。


 しかし、いくらなんでもあんな放出をしてしまってはもう力の殆どが残っていないだろう。

 王宮の魔剣使いであるルーの言では、己の中にあるエネルギーを使って魔剣使いは業を公使するとのこと。


 であれば、もうあんな大業が出てくるなど、考えたくもないし、可能性としても少なかった。

 淡い期待、というか、少々以上の希望的観測が含まれていたが、幸いなことにそれについては将校は間違っていなかった。


 誤算があったとすれば、それは兵の士気が最低辺にまで落ちたことと、



 その魔剣使いがどうしようもなくバカだったことである。






 またしても大地が戦慄いた。






 風の魔剣使いの猛威は、まだ終わっていない。





「漢を魅せろ!! ガイアス・ベルザアアアアアク!!!!」





 悪鬼の怒声が、王都軍を震え上がらせた。















「あ~あ~あ~あ~、誰かガイアスを止めろ!! あいつもう相当体力削ってるはずだろ!!」



 慌てて示唆する竜基の声に、しかし反応は薄い。

 ヒナゲシは肩を竦めるのみで、アリサに至ってはため息しか吐いていなかった。

 そんな周囲のやる気のない状況に、竜基としてもやるせない気持ちしか残っていなかった。


 あれだけ切羽詰まった状況で開戦したはずのこの戦は、何ともしまらない終わり方をみせようとしているのだからやるせない。

 魔剣使い、ひいてはガイアス・ベルザークという男の強さと、そしてその気合いの引き金となった赤い斧の集団についての思考を巡らせつつ、額に手を当てて竜基は吐き出すように声を出した。


「退却の銅鑼を鳴らせ。赤い斧の集団も迎え入れろ」


 竜基の策は上手くいかなかったはずなのに。一度は絶体絶命の窮地に陥りそうになったのに。

 なんだかあっさりと決着がついたこの状況に、一番納得がいかないのはほかでもない彼であった。


 敵軍は、蜘蛛の子を散らしたようにてんでばらばらの方向へと逃げていく。もう朝焼けのまぶしい時間も過ぎ去り、完全徹夜となった戦いは、こうして幕を閉じようとしていた。


 そんな司令部から見える景色を眺めつつ、竜基はつぶやく。


「まあ・・・・・・なんとかなって良かった」

「今回は危なかったけれど、ふつうは今までみたいに鮮やかにはいかないものよ?」

「・・・・・・如何に自軍の消費を押さえるか。それが軍師の仕事なんだ。だからこそ、俺は今回はしっかりと反省するべきだ」

「そ。・・・・・・ふふ」


 隣に来ていた銀の少女。

 小さく笑う彼女に竜基の首は傾いた。

 なにがおかしいのだろうか。一度は窮地に陥り、彼女だけを逃がそうという案もでたくらいだと言うのに。


「成長したわね、リューキ」

「へ?」

「今までみたいに、敵を倒すことそのものを怖がるよりも。しっかりと前を向いている。やっぱり、そうでなくっちゃね」


 にこりとほほえみを向けてアリサは言った。一度目を丸くした竜基も、小さく口元をゆるめてから、彼女の視線を外すように外を見る。


「今は、目指すべきものがある。アリサと、みんなと。目指すべきものがあるこの状況で。俺一人がうじうじしていられないからな」

「・・・・・・」

「もちろん、悔しい。人の命を救えない自分の力の無さがとても。だけど、それなら。それなら俺の出来る範囲で戦うことが、精一杯の償いなんじゃないかと、そう思う。死んだ人に対して、胸を張って「すばらしい国を作った」と言えるように、俺はなりたいから」

「そうね」



 大地の裂けたこの状況。


 竜基の胸には、自分の力だけでは御しきれなかった悔しさが強く残っている。

 一歩間違えれば負けていた。そしてその責任は自分にある。

 しかし、これは糧だ。

 赤い斧の集団が来てくれたからこそ気づけたこと。

 自分がやってきたことはマイナスではない。

 そう思ったからこそ、敗北寸前まで進めてしまった自分と真っ正面から向き合って叱り散らすことが出来る。




 竜基にとって初めての敗戦。

 しかしながら結果として北アッシアは勝てた。そのことに感謝して、竜基は自らの敗因を真剣に考えようと思った。







「ガイアス将軍が! ガイアス将軍の意識がありません!!」



 魔力切れを起こしたバカを、しっかりとベッドに放り込んでから。

2月2日



はい、あまりだれも覚えていないというか、この日からずっと追いかけてくれている方がどの程度いらっしゃるかは分かりませんが・・・・・・はい、とうとう魔剣戦記も一周年を迎えます。おめでとう。


思い返せば本当に色々なことがありました。

エタった理由、カッコつけて電撃の投稿分を書いていたなんて言いましたが、あれ実は理由の半分以下でもないんですよ。執筆する時間があるなら魔剣戦記を書くのが最優先なのに。

まあいいわけにしかならないんですが、本当に私生活の方がばたばたしていました。身内が二人連続でぽんぽん亡くなったので。


「その話を聞いて気分が萎えました、魔剣戦記のファンやめます」


ってなられたくなくてかくしてたけど、本当はそんな感じ。色々慌ただしかったのです。


えー、さて。


まあそんなこんなで長かったような短かったような言い訳がましい一年ではありますが、ここで一つ、せっかくだから一周年企画でもやろうかと。


はい、そこの腐女子立たないの。


えーっと、やっぱり僕が魔剣戦記で一番自信があるのは、ヒロインなので。

誰か一人ヒロインを決めて、その子とのエピソードを書こうかなーと。


ああ、せっかくだからIFの告白シーンでも。





・・・・・・さて、お察しの方もいらっしゃるとは思います。


ぶっちゃけ僕、ライカ、アリサ、ヒナゲシの誰でも好きですし、魔剣戦記のコンセプト上、誰が正ヒロインとも決めていません。

モチベーションは誰を書いても変わらないんですよ。


ええ、皆さんにお願いがあります。







ここに、投票箱があるじゃろ?




コメを、記入して、ヒロインを投票じゃ!!





感想、割烹コメ。


どちらでも構いませんのでお待ちしています。


ああ、メッセージは他人に見えないのでおやめください。



以下1月5日22:00追記


投票と併せて、色々感想書いてくれる人が居て。

思った以上の人が魔剣戦記を読んでくれてるんだって思って、僕泣きそうです。凄く嬉しいです。ありがとう!ありがとう!!

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