八等級勇者め、この世界の真の恐ろしさを思い知れ!「何それ!?シリーズタイトルなんですか!?」
恒星だらけ
同シリーズの「星空上の大戦争」を読んでからじゃないと話がまったく訳解らん理解不能意味不明ですので注意して読んでください。
今回の主役は四天王の内の一人ですかね。さて誰でしょう?
勇者達が魔王を倒してから三年、平和なこの国では、魔物も人間(らしき生物)も、やはり平和に暮らしていた。
この国では、魔術ショーなるものが盛んである。魔術ショーとは、参加者の魔術の美しさを競う、簡単に言えば魔術のコンテストのようなものである。
今日はその魔術ショーが行われる日だ。
*
かつて魔王に挑んだ勇者、アルキオネは、魔術ショーの会場へ向かうために、三年前にはなかった「電車」なるものに乗っているのであった、はずだったのだが。
「…。なかなか来ませんけど」
「電車」の時間が遅れ…、違う、明らかに異常になってきたため、元勇者のアルキオネは会場に行くことができない。
「なかなか来ませんね、アルタイルさん」
「どうしちゃったんでしょう」(鷲)
アルタイル。そう呼ばれたのは、勇者パーティの一人、僧侶のアルタイルだ。三年前にかけられた魔法で、台詞の後に(鷲)がつく。
「もしこのまま来ないのであれば駅ごと俺の殲滅魔法で「やめなさい」……、はい」(鷲)
僧侶はすぐに殲滅魔法と呼ばれる最強(と思われる)魔法を放ちたがる。
「どうしてあなたはいつも殲滅魔法を放ちたがるんですか!そもそもここではなったら私達も死にますよ!」
いつも勇者が殲滅魔法を止めるのだ。勇者は毎日毎日大変な目に遭わされている。この前なんか家が大破して、完全に全壊だろ、と思って調べてもらったら「あ、これ半壊ですね」といわれて保険金をもらえなかったのである。その後僧侶は半殺しに遭いました(笑)。
「ここで殲滅魔法放ったら今度は普通に殺しますよ」
僧侶はつまらなそうな顔をしている。
*
待つこと二十分。
「おかしいですね。何かあったのでしょうか」
「もしかしたら、電車がガス爆発したのかも知れませんよ」(鷲)
「それはバスです」
「墜落したのかも!」(鷲)
「それは飛行機です。浮遊すらしていないのにどうして墜落するんですか」
「あ、もしかしたら自動販売機の下の隙間に落ちた小銭を拾おうとして――」(鷲)
「いい加減にしないと段ボール箱に突っ込んで道端に捨てますよ」
「その段ボール箱に書く文字は“拾ってください”ですか?」(鷲)
「いや、“燃えるゴミとして処分してください”にします」
「それなら何で自分で捨てないんですか」(鷲)
「バラバラに解体しないと粗大ゴミになるからです。人の解体は嫌いですから」
「魚は解体するくせに」(鷲)
「あれは料理のためです」
勇者達の会話は相変わらず下らん。
*
待つこと二十分。
「遅すぎません?」(鷲)
「いや、それさっきから言ってましたけど」
「もう我慢できませんよ!!」(鷲)
「殲滅魔法はやめてくださいよ」
「そんなもの使いませんよ。ここからは、線路を歩いていきましょう」(鷲)
「そんな危険なことできませんよ!!」
「大丈夫です。全然来ませんから。それに、ここを歩かないでどうやって会場まで行くんですか!」(鷲)
「そうですねぇ。仕方ないです。今回ばかりはそうしましょう」
「もし電車が突っ込んで来たら殲滅魔法で爆破します」(鷲)
「もう好きにしてください」
「何十分も遅れてしかも何の連絡もくれない乗り物など爆ぜればいいんですよ」(鷲)
「そ、そうですよね。わ、私もそう思ってましましたよアハハ(汗)」
「じゃあ行きましょう」(鷲)
勇者達は線路の上を歩いていった。まさに勇者である。
*
線路を歩くこと十分。
「アルキオネさん、俺達大変な過ちを犯しているような気が」(鷲)
「そりゃそうですよ。というか、何で線路の上を歩くという結論に至ったんですか!!私にはあなたの思考回路の構造が1ヨクトメートルも理解できませんよ!!」
「いや、そうじゃなくて」(鷲)
「じゃあなんなんですか!」
「反対方向に歩いているような気が」(鷲)
「嘘ですよね!」
「嘘じゃないです」(鷲)
「いつ気付いたんですか!」
「歩き始めた時」(鷲)
「じゃあもっと早く言って下さいよ!遅れちゃいますよ!!」
勇者達は十分掛けてさっきの駅に戻った。
「ここからまた歩くんですか」
「すみませんホントもう」(鷲)
歩いていこうとすると、もう一人、後ろからついてくるような気配が。
「誰でしょうね、あれ」(鷲)
「さあ」
勇者達は後ろを振り返る。
「シリウスさん!」
「貴様らか。会場に向かう途中か?」
「そうですけど、何であなたまで線路を歩いてきてるんですか!魔法で飛んでいくこともできますよね!!」
「ああ、できる。が、なるべく会場につくまでに魔力を使いたくない」
「なるほど」
勇者達とシリウスは線路を歩く。
「そういえばさあ、八賢者って何者だったんでしょうね」
「私は知らん」
「八賢者の中で一番賢者っぽい人は誰でしょうね」(鷲)
「何でそこまで話が飛ぶんですか!」
「俺はウラヌスさんだと思いますけど」(鷲)
「私の話無視ですか!?」
「私はジュピターだと思う」
「待ってくださいよ!!二人とも賢者っぽくない人の名をいってますよ!ウラヌスさんは言ってることが賢者っぽくないですし、ジュピターさんはすぐふざけるので賢者には向いてないです!」
「うるせえ!人の意見に文句を言うんじゃねえ!!」
「あなた人じゃないですよね!魔物ですよね!」
「じゃあアルキオネさんは誰が一番賢者だと思うんですか?」(鷲)
「アースさんじゃないですか?」
「理由は?」(鷲)
「さあ?なんとなくですね」
「貴様、本気で死にたいらしいな」
「あ、すみませんよホント。反省は一応してるんですからね。あ、いやホントですよホントホント」
そして更に歩くこと十分。
「あ、ここですね」(鷲)
「この駅で電車を降りて、徒歩で1分2秒だったな」
「何でそんなに詳しい時間」
勇者達は線路から復帰し、駅を出て1分2秒歩いた。
「ここが会場か」
「あ、もう始まってますよ」(鷲)
「当たり前じゃないですか。グダグダしすぎでしたよ」
会場はもうすでに賑わっている。
「次はエントリーナンバー56710900番、ギェナー!」
「もうそんなに進んでるんですか!!私達の番飛ばされた可能性大ですよ!!」
「ていうか、まさかこんなに恒星の種類があったとはな」
「感心してる場合ですか!!ほら行きますよほら!」
勇者達は会場の奥深くまでに足を踏み入れた。
「なにあれ!!すごっ!!ステージに罅が入って今にも崩壊しそうですよ!!」(鷲)
「あなたの感性はいまいち理解できません」
「ふん。あんなものより私の魔法の方が2億~3億倍すごい!!!」
「それあなたの実年齢ですよね」
「失礼な。実年齢ではない。元になった恒星の年齢だ」
「どうでもいいです。どのみち恒星としては若い方だとは思いますよ」
「貴様の情報は当てにならん」
勇者達は自分達の出番を待つ。「だから多分飛ばされてますって!」
「次に、65778121番、シリウス!!」
「嘘」
「ほらシリウスさん、良かったですね」
シリウスは少し咳払いをした後、偉そうにステージ上に上がる。
「貴様ら!私の魔法を見よ!!」
客席から歓声が起こる。意外にもシリウスは人気なようだ。
「何かよく解らんけど悔しいですよ!」(鷲)
「まあまあ落ち着いて」
「もしも何か気に食わないことがあったら「殲滅魔法だけはやめてくださいよ」・・・」(鷲)
勇者達がなにやら訳のわからん話をしている間に、シリウスは魔法を成功させたようだ。
「うわっ!何あれ!!キモッ!!」(鷲)
「本当ですね!!キモい!!」
シリウスはいつの間にか6558体に分身していた。
「シリウスさんだらけだ!!」(鷲)
「何あれ!!すごい!!すごすぎる!!」
勇者達が感心していると、シリウスは客席の方まで降りていき、観客までも増やした。
「うわッ!!同じ顔の客が何千人もいる!!狭そう!!」(鷲)
「ていうかあそこだけ四次元空間な気がするのは私だけですか!?」
「いや三次元だと思います」(鷲)
「あ、一気に冷めましたね。私のせいですか?多分すみません」
やがて、観客は60000人程度まで増え、その後シリウスはその客を一人になるまで潰していった。
「増やしたのを処分する方が魔力要りそうですね」
「てか表現が、潰していった、って」(鷲)
*
なんだかんだあって、勇者達は会場を後にする。
「残念だったな。貴様らの番が飛ばされたっきり回ってこなくて」
「別にいいですよ。他の出場者を見ているほうが楽しいんです」
帰りの道は勿論、線路だ。
「電車、待たないんですか?」
「待ってても仕方がない」
「もし途中で来たら殲滅魔法で」(鷲)
「いや、私の最上級魔法で粉砕してやるのが良いだろう」
「どっちが車両を潰すかで争わないで下さい」
*
なんだかんだで勇者達は無事に線路を渡り終えた。
が、無事だったのは線路上の時だけで、駅のホームに這い上がった途端、新たな脅威が襲う。
「お、勇者達ではないか」
「げっ!阿呆賢者が出た!」(鷲)
「誰が阿呆賢者だ!」
「それより、あのとき(魔王がミミズに戻った時)に消えたんじゃないんですか?」
「消えたのは惑星であった時の魂だけで、身体はちゃんと生きておるぞ。記憶も」
大赤斑の法衣の賢者、ジュピターは、勇者達とともに歩くことになった。「こいついらねぇ」
「ところで、ジュピターさんって家持ってるんですか?」
「心配するな。持ってないから」
「余計に心配ですよ!!」
「つーか、どこに住んでるのか訊けよ。私も気になって仕様がない」
「じゃあ訊きますけど、どこに(以下略)」
「それは個人情報だから教えられん」
「殺すぞ」
「ひー!野蛮な!仕方ない。教えるから殺さないでくれ!」
「とんだへタレ賢者だな」
「えっと、そこの角を曲がった所にある公園の、右から二本目、手前から見て十本目の木の、下から数えて35本目の枝にある鳥の巣の近くに住んでいる人に訊けば解る」
「真面目に答えろ!」
ヘタレ賢者の住んでいる場所が気になったため、勇者達はそこの角を曲がった所にある公園の、右から二本目、手前から見て十本目の木の、下から数えて35本目の枝にある鳥の巣の近くに住んでいる人のところに行くことにした。
「何でこんな回りくどいことをしなくちゃならないんだよ」
「それはこの賢者が馬鹿だからですよ」
「誰が馬鹿だ!」
しばらく歩いて上って勇者達は、そこの角を曲がった所にある公園の、右から二本目、手前から見て十本目の木の、下から数えて35本目の枝にある鳥の巣の近くに住んでいる人のところに辿り着いた。
「どうやって話しかけましょうか?」(鷲)
「裏ストーリーでは勝手に操作してくれることはないので、私が木から落ちないように慎重に十字キーで動かし、あの人の前に立って△ボタンを押して話しかけましょう」
「落ちたらダメなのか?」
「はい。落ちたら私の体力が0になって間違いなく死にます」
「大丈夫だ。死んでも生き返らせるから」
「だからってわざと失敗するのはやめてくださいよ。痛いのは嫌いです」
「大丈夫ですよ。痛いのは一瞬ですから」(鷲)
「あ、ちょっとまっ!わざと落とすなと言いましたのに!ぁぁぁぁぁ!!!!」
勇者は落下していき、木の下には棺桶があった。
「死んだ時に棺桶に入れておいたから、残酷な描写をしないですむ」
「おお!すごい魔法ですね!」(鷲)
「感心してないで助けに行け。殺したのは貴様だろう」
勇者は助けられ、僧侶はボコされた。
なんだかんだで勇者達は木の上の人に話しかけることができた。
「何だお前ら、俺になんか用か」
「ウラヌスさんじゃないですか」
「ああ、あのときの勇者か。全然覚えてな…、いやいやいや!バリバリ覚えてるぜ!!」
「嘘は要りませんよ」
「まあいい。ジュピターの家はこの世界に必ず何処かにある」
「何で訊きたいことが解ったんですか!?それに答えが曖昧すぎて解らないんですけど!!」
「細かいことは気にするな」
「めちゃくちゃ気になりますけど、ありがとうございました」
勇者達は公園の、右から二本目、手前から見て十本目の木の、下から数えて35本目の枝にある鳥の巣の近くに住んでいる人のところを去った。「しつこい」
「さて、私達もそろそろここでお別れというわけだな」
「さようなら!良いお年を!」(鷲)
「何でそうなるんだ」
「だって今十二月の終盤ですよ」
「十月だボケ!勝手に二を付け足すんじゃない!終わりの方でもないし!」
「じゃあさようなら!メリークリスマス!」
「貴様もか!十月だと言ってるだろう!」
なんだかんだでボケ勇者とボケ僧侶とツッコミ魔道師は、それぞれの家に戻っていった。
(了)
今回の主役はシリウスでした。あ、よく考えたら他の四天王みんな死んでますね。呪文で生き返ることを祈ります。
シリウスさんのデザインは大体決まってるんですよ。このまえ落書き気分で書いてみたらなかなか難しかった。カペラさんも書きましたが、普通のカラスに足を一本付け足しただけのオリジナリティ0、寧ろマイナス域突入でした。
某は絵が苦手ですから。
そして、このシリーズはしばらく停戦で。ネタ切れっす。
「気が向いたらまた出すからな」