第88話『東公爵は、本気で言っていた』
■草原と平穏の国:東公爵別邸
【東公爵】「ところで、うちの娘のドコが不満なんだ?」
【男主人】「はっ? いえ、すごく有能で不満なんか、ありませんが……」
【東公爵】「いや、仕事の話じゃない。男と女が同じ部屋で同じ時を過ごしていて、指一本手を出さないなんて、お前、少しおかしくないか? 母親似だから、ああ見えて、脱ぐと良い身体をしていると思うぞ」
【男主人】「おかしくありません! そもそもが、一緒にいるのは仕事中じゃないですか!」
【東公爵】「何を言う、オレが若い頃は昼の仕事も夜の仕事も区別はしなかったぞ。それとも、あれか、人間族相手じゃ、モノが役立たないのか?」
【男主人】「東公爵殿……王子様から変な話を吹き込まれていませんか!?」
【東公爵】「おう、エルフ族が2人に獣族が1人、合わせて3人もの愛人に囲まれてウハウハしてるという話だろ。ずいぶんとマニアックだったんだな、お前」
【男主人】「愛人でもマニアックでもありませんっ!!」
【東公爵】「現にパートナーとして連れてきたのは、長ミミ殿だったじゃないか。お前はまだ未婚だし、夜会のパートナーに選んだけど、まったくの無関係です、とでも言い張るつもりか?」
【男主人】「うっ……」
【東公爵】「まぁ、そこでだ。いい年をして、未婚でフラフラしているお前に耳寄りな計画だ。
副官女を正妻にすれば、今なら俺の領地を結納代わりにくれてやるぞ。長ミミ殿には申し訳ないが、第二夫人で我慢してもらってだな」
【男主人】「何の話をしていますか!?」
【東公爵】「いや、お前が俺の義理の息子になる計画だが? 男なら自分の城に憧れるだろ?」
【男主人】「東公爵殿、冗談も程々に…………」
【東公爵】「いや、娘のことをダシにしてまでからかうつもりはないぞ。いたって真面目な提案だ。
俺は無骨者だからよ。娘が小さい頃からどう扱っていいか分からず、不自由しないように、欲しい物は与えてやったし、ワマガマはできるだけ叶えてやった。バカな娘に育てちまったかな、と思ったさ。
ところが、ある日を境に急に良い女になりだしてな。話を聞けば、お前の事ばかり、最後に聞いたワガママが、軍の所属になってお前の部下になりたいだ。こりゃあ、気持ちは本物だと思うだろ」
【男主人】「…………」
【東公爵】「幸いにして、俺もお前が嫌いじゃない。次期王候補の王子様の覚えも良い。他所の家に取られるくらいなら、お前を自分の家に取り込みたいっていうのは、不思議な話か? なぁ?」
【男主人】「……僕を少し過大評価していませんか?」
【東公爵】「お前は、自分のことを過小評価しすぎだ。俺は、お前にやるならば、娘も領地も財産も惜しくないと言ってるんだ。それがお前の価値だ」