第87話『東公爵から、協力を得ていた』
■草原と平穏の国:東公爵別邸
【男主人】「…………」
SE(扉の開閉音):ガチャ、ギィ、バタン
【東公爵】「よぉ、待たせたか?」
【男主人】「突然の訪問で申し訳ありません」
【東公爵】「男主人殿なら、真夜中に訪ねてきてもらっても構わんぞ? ちょうど良い、夕食も食べていけ」
【男主人】「お誘いは嬉しいのですが、ひとまず、用件を……ステージ オン フェイク サウンド……《虚像世界》」
【東公爵】「防諜にしちゃ、ずいぶんと物々しい結界だな」
【男主人】「先日の夜会ですが……僕のパートナーに“火蠍の毒”が盛られました」
【東公爵】「!? そんじゃあ、長ミミ殿は……?」
【男主人】「僕の魔術による応急処置で何とか。今は少し衰弱していますが、命に別状はありません」
【東公爵】「そうか、そいつは良かった……しかし、嫌がらせにしては、少々度が過ぎているな」
【男主人】「警告のつもりかもしれません。まぁ、弟大公を失脚させようと動いていることが、どこからか伝わったのでしょう」
【東公爵】「相手の危機感を煽ってボロを出させるつもりだったのか?」
【男主人】「王子様から、どこまで聞いていますか?」
【東公爵】「大雑把な目的だけだ。弟大公派の一気に叩き潰すらしいな。俺は大いに賛成だぜ、そっちの方が俺も色々とやりやすくなるからな」
【男主人】「現状は、状況がやや膠着している感じです。お互い、攻め切るだけの手札が揃っていない感じですね」
【東公爵】「ふぅむ……」
【男主人】「こっちとしても、後一歩の所までは来ているのですが、最後の一歩が詰めれません…………正直、今回の嫌がらせにしても、毒の入手経路を調べるだけ無駄でしょう」
【東公爵】「離反工作は?」
【男主人】「敵の勢力の切り崩しはもちろん行なっています。日和見ならまだいい方で……向こうで吸う蜜は甘いのでしょうね」
【東公爵】「裏切る旨味がなければ、裏切らないよな。沈みゆく船ならまだしも、まだ、豪華客船に見える船から下りたがるものは……」
【男主人】「ええ、今以上の要求を突きつけられても、それでは、第二の弟大公勢力を産むだけですし……こちらにとって、条件が良すぎる場合、最悪の事態での裏切られる可能性も警戒しないといけません」
【東公爵】「苦労してんなぁ」
【男主人】「ははは、東公爵様にそう言ってもらえれば、苦労も少し報われます。後一手……特に相手の勢力の詳細な情報が欲しい」
【東公爵】「いざと言う時は力を貸すが、そうだな……南の方には、俺の方から働きかけてみよう」
【男主人】「助かります」