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第86話『白髪女は、気付いていた』

 

 ■鉱山と武勇の国:宿屋

 

【白髪女】「やれやれ、あの程度で酔い潰れるようじゃ、アタシの孫とは思えないねぇ。そういや、あの酔い潰れ方は、旦那に似てるかも……。

 ところで、アンタは酒は強い方かい? そんな所で“聞き耳”を立ててないで、中に入っといでよ。

 もうちょっと寝酒を楽しもうかと思ってるんでねぇ」

 

SE(扉の開閉音):カチャ、キィ、パタン

 

【黒服女】「…………気付かれていたのですか?」

【白髪女】「盗聴系魔術は確かに魔力の隠密性は低いけど、魔術である以上、魔力の揺らぎは絶無じゃないからねぇ。分かる人は分かるもんさ」

【黒服女】「白髪女様は、最初からわたしのことには気付いていたんですか?」

【白髪女】「うん、まぁ、気付いていたと言うか、感じていたっていうのが正しいかねぇ」

【黒服女】「わたしも未熟ですね……」

【白髪女】「いや、アタシも全部が分かっていたわけじゃないんだよ。ただ、まとう空気ってヤツかねぇ。こればっかりは経験による勘としか言えないけどさ」

【黒服女】「そうですか……」

【白髪女】「別に、これから部下男の寝込みを襲いにいってもいいんだよ? 今なら前後不覚に酔ってるし、朝起きて、アンタが隣で寝てれば既成事実の出来上がりだ。アタシは見て見ぬ振りをしてあげるからさ」

【黒服女】「なっ!?」

【白髪女】「おやまぁ、ずいぶんと初心うぶだねぇ」

【黒服女】「か、からかっているのですか! 部下男様といい、白髪女様といい、わたしは敵対国の諜報部員なんですよ!! なんで、そんなに親しげなんですかっ!?」

【白髪女】「そう受け取られてしまったら、すまないねぇ。そもそも、なんでアタシとアンタが敵対しないといけないんだい?」

【黒服女】「それはもちろん、わたしがこの国の軍人で、白髪女様たちは「草原と平穏な国」の軍人だからです!!」

【白髪女】「はっ、つまらない理由だねぇ。それじゃあ何かい? アタシは、敵国の人間らしく、ここで四方八方に魔術で爆発を起こせとでも?」

【黒服女】「そんなことは言っていません!」

【白髪女】「アンタの言う、敵対国ってのは、そういうもんだよ? 相手の国に住む人間と自分達は違う、だから、何をやってもいいんだ……そうとでも思わなければ、戦争なんて起こせないもんさ」

【黒服女】「それは…………」

【白髪女】「そして、そんなバカが1人か2人いれば、戦争ってのが起こってしまうのが、国と戦争の怖さってヤツだねぇ。だから、アタシは、己の敵と認めたヤツと弟子以外には優しくしているのさ」

【黒服女】「…………」

【白髪女】「アンタはアンタの考えを持つんだねぇ。アタシたちは、確かに敵対国の軍人かもしれないけど、アンタの敵になったつもりはまだないんだよ」

 

 

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