第84話『なんだか、いい感じになっていた』
■鉱山と武勇の国:宿屋
【黒服女】「お帰りなさいませ、部下男様」
【部下男】「ん、ただいま、お祖母様は?」
【黒服女】「ええと、いつもの酒場に行くと仰ってました」
【部下男】「そう。それじゃあ、オレは休むから、黒服女さんも休んでいいですよ」
【黒服女】「あ、あの? それだけですか?」
【部下男】「それだけって?」
【黒服女】「わたしに言いたいことは、ありませんか? わたしの素性はもうバレてるんですよね?」
【部下男】「そうか、なんか変だと思ったんだけど……その口調が素なの?」
【黒服女】「どっちが素と言う訳じゃありません、昔から気になる人の前だとテンションが上がってしまうだけで……って、そうじゃありません! もしかして、わたしの勇み足!? 言わなくてもいいこと言っちゃった!? 恥ずかしいっ! もうお嫁に貰ってもらうしかないと思いませんか!」
【部下男】「おお、いつもの黒服女さんだ」
【黒服女】「部下男様の視線が、わたしの扱いには慣れて飽きてきたぜコイツって物語ってますね! そんな冷たい部下男様も大好きですっ! 離れたくありません!!」
【部下男】「なるほど、もしかして、それは上がり症の一種なのですか?」
【黒服女】「ぐっ、やめてっ、そんな冷静にをわたしに分析ないでっ!! これが、羞恥責めってやつっですかー!? 今なら、恥ずかさで九死できる! ああ、わたしの一生はどこにっ! できれば、部下男様の横にそっと寄り添って歩む人生を希望っ!!」
【部下男】「黒服女さんは黒騎士殿の部下ですよね。オレを見張る任務はまだ継続中なのですか?」
【黒服女】「やっぱり、バレてるー!?」
【部下男】「うん、まぁ、最初からある程度は疑っていたけど……」
【黒服女】「はうっ……あ、でも、最初に空腹で倒れていた所を助けてもらったのは偶然で、任務はその後からいきなり言われただけですから!! わたしと部下男様の出会いは、運命の必然ってやつです!!!! もう、これは……もごっ」
【部下男】「はいはい。夜も遅いから、大声はナシでね(手で口を押さえながら」
【黒服女】「もごももごもも、もご、もごもごごもご……!!」
【部下男】「落ち着くなら、手を離すから」
【黒服女】「もごもご! ぷはぁ……最初から疑っていたなら、どうして、わたしと一緒にいたんですか?」
【部下男】「あー……なんだ、その……」
【黒服女】「???」
【部下男】「女の人から、好意をもたれるのが久しぶりだったんで、オレも少しだけ舞い上がってたみたいです(照れ」
【黒服女】「っ!?(真っ赤」
【部下男】「だから、まぁ、もうしばらくは、このままの関係も悪くないかなって……少なくとも、この宿に逗留している間は、敵側とか味方側とか考えないってことにしませんか?」