第83話『冷や汗を流しながら、面会していた』
■鉱山と武勇の国:黒騎士邸
【部下男】「…………」
【黒騎士】「部下男殿、さぁ、お茶でも飲んで気持ちを和らげて頂きたい」
【部下男】「生憎オレは、アナタの様な武人の前でリラックスできるほど、豪胆じゃないんですよ」
【黒騎士】「別に毒などは入れていないが?」
【部下男】「そりゃそうだ、毒なんか入れなくても、一瞬でオレの首を切り飛ばすくらいは可能でしょう」
【黒騎士】「別に、貴方の首を切るような命令は受けていない」
【部下男】(ヤバイ、変な汗が止まらない……本気で怒った男主人様を初めて見た時と同じくらいだ)
【黒騎士】「さて、さっそくだが、本題に入るが、よろしいか?」
【部下男】「こっちに選択権はないと思いますけど?」
【黒騎士】「ご理解頂けているようで、話が早い」
【部下男】「…………」
【黒騎士】「貴方が“不死の魔人”殿の関係者であることは分かっている」
【部下男】「ふむ、オレには“不死の魔人”なんて恥ずかしい名前の知り合いはいませんが?」
【黒騎士】「先ほどは、自分は豪胆じゃないと言っていたわりには、なかなかどうして……。訂正しよう、森林軍第十一師団所属の部下男殿」
【部下男】(こっちの素性はモロバレってことか……しかし、まだ生きている、生かされているということは、まだ絶望的な状況ではないのか?)
【黒騎士】「話を続けよう。俺の主が、そちらの男主人殿との会談を望んでいる」
【部下男】「はぁっ? どんな無理難題を言われるかと思いましたが、そんなことが可能だと?」
【黒騎士】「無論、直接あって話すのは無理だろうが、《投影通話》と言うような魔術を使えば可能だと聞いている」
【部下男】「確かに、お互いに目印となる媒介を持っていれば、不可能じゃないが……そもそも、そっちの主は、確か……」
【黒騎士】「俺の主は、この国の第一皇女である鉄皇女様だ」
【部下男】「はい、分かりました。……と、オレが素直に返事するとでも? 何が目的ですか?」
【黒騎士】「さぁ、俺にも詳しい話は聞かされていなくてな。これは俺の予想に過ぎないが、会談の内容は、今回の戦争についてになるだろう、と述べておこう」
【部下男】(……嘘だな。ただ少なくても、戦争について話し合いたいと言うのは本当か?)
【黒騎士】「他に何か質問が?」
【部下男】「返答は今すぐには無理ですね。いつまで待てます?」
【黒騎士】「事態は常に動いているからな、回答は早めに頂きたい」