第74話『副官女が、話を合わせてくれていた』
■草原と平穏の国:夜会(広間)
【副官女】「あっ……」
【男主人】「こんばんわ」
【長ミミ】「…………(ぺこり」
【副官女】(ええ~~!? と、隣にいるのは、確か長ミミさんでしたっけ? あううう、そんな腕を組んで入場するような仲にご進展をぉ!?)
【男主人】「副官女は、流石にドレスが似合っているね。そういう格好も可愛いよ」
【副官女】「か、かわかわ…………(真っ赤」
【長ミミ】(ご主人様……鈍いと言うか、天然と言うか……馬鹿ではないのですが……)
【男主人】「ところで、副官女、東公爵様は?」
【副官女】「お父様は……入場して、しばらくの間は挨拶回りで一緒だったのですが、少し込み入った話があるとかで個室の方へいかれました」
【男主人】「そうか、挨拶をしたかったんだけど……大切な娘さんを預かっているわけだし」
【副官女】「そんな大事な人だなんて……(もじもじ」
【長ミミ】「……少しニュアンスが違うようですが……」
【副官女】「はっ! ところで、男主人様、その、そちらの女性は……」
【男主人】「(少しわざとらしく)ああ、そうだった、紹介が遅れた。今、我が家に逗留なさっている長ミミさんだ。隣国の氏族長の血筋に連なる方でね」
SE(周りの人々がどよめく音):ザワッザワッ……
【長ミミ】「(少しわざとらしく)“初めまして”、護りを司りし“棘の氏族”に、其の名を連ねます森の子、長ミミと申します。この出会いを嬉しく思います」
【副官女】「……東公爵が第一子、副官女です。“初めまして”、私もお会いできて嬉しいですわ」
【長ミミ】「東の所領は、広き“海”というモノに面しているとか? 恥ずかしながら、私はまだ“海”と呼ばれるモノを見たことがありません。聞くところによれば、国にある最も大きな湖を何十倍も大きくしたモノだとか?」
【副官女】「ふふっ、“海”は湖と比べることもできないほど、広く、また深いモノですわ」
【長ミミ】「まぁ、一度見てみたいものです」
【副官女】「東の所領にいらっしゃる際には、是非私の実家をお訪ね下さい。ささやかながら、両国の友好の証に歓待させていただきますわ」
【長ミミ】「それは素敵なお誘いですね。それに、副官女様のお話をもっと聞かせていただけないでしょうか?」
【副官女】「こちらこそ、長ミミ様の色々なお話をお聞きしたいですわ。男主人様、宜しければ主宰の挨拶が始まる前に少しノドを潤しませんか?」