第7話『長ミミさんは、知っていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「はぁ、疲れた……ただいまぁ」
【長ミミ】「お帰りなさいませ、ご主人様。今日は、随分とお疲れですね」
【男主人】「ああ、仕事の方でちょっと問題があってね……」
【長ミミ】「まったく王子様の女癖の悪さにも困ったものですね」
【男主人】「ッ!? なんでそれをっ!?」
【長ミミ】「『メイドさんネットワーク』通称MSNの最新情報ですから」
【男主人】「何それ、なんか怖っ!?」
【長ミミ】「古参の『近所のおばちゃん井戸端会議』通称KOIと国を二分する諜報組織です」
【男主人】「いや、もう…………」
【長ミミ】「MSNの最新情報によれば、王子様の正式な愛人は5名。しかし、今回は王子様の愛人を自称する女性による騒動……裏では、王弟派の残存勢力が関与して“いた”……という噂ですね」
【男主人】「…………」
【長ミミ】「おや? どうかされましたか?」
【男主人】(なんで過去形なの? と訊けない僕)
【長ミミ】「無理はよろしくないですよ、ご主人様」
【男主人】「な、なんでもないよ?」
【長ミミ】「しょうがありません。その悩みをスッキリ解消させましょう」
【男主人】「いや、別に……」
【長ミミ】「そもそもMSNとKOIの抗争の歴史はあまり古くなく、ここ10年の……」
【男主人】「え、そっち!?」
【長ミミ】「ご主人様、人が説明している間は静かにすると教わらなかったのですか?」
【男主人】「知ってるけど。いや、別に謎の組織の抗争とか言われてもね」
【長ミミ】「……これは、失礼しました。勘違いしていたようです」
【男主人】「勘違いというか、見当違いだったというか」
【長ミミ】「王子様の愛人のプロフィールが知りたかったのですね?」
【男主人】「…………あ、それはちょっと知りたい」
【長ミミ】「では、夕食が終わりましたら詳しく……早くしないとシチューが冷めてしまいます。ご主人様」
【男主人】(とりあえず、滅多なことはできない、ということは分かった)