第73話『長ミミさんは、考えていた』
■草原と平穏の国:馬車の中
【長ミミ】「…………」
【男主人】「…………」
SE(馬車の音):ガタゴト……
【長ミミ】「…………」
【男主人】(うおお、なんだ、この沈黙はっ! 新手の精神攻撃かっ!?)
【長ミミ】「……ご主人様」
【男主人】「は、はいっ!」
【長ミミ】「いくつか、お訊きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
【男主人】「どうぞ、僕が答えれることでしたらいくつでもっ!」
【長ミミ】「ありがとうございます。では、まず、今回の夜会で気をつけるべきことはありますか?」
【男主人】「ええと、悪いけど、できるだけ僕の傍から離れないようにして……人目のある場所で襲撃をしてくるとは思わないけど、嫌がらせ位なら仕掛けてくる可能性はあるから」
【長ミミ】「多少の嫌がらせ程度、私がご主人様にしていることに比べれば些細なことだと……」
【男主人】「いや、同意したくないけどね!」
【長ミミ】「今回のパートナーに、何故副官女様を選ばなかったのでしょうか?」
【男主人】「あー、夜会には東公爵も呼ばれているみたいだから、多分、そのパートナーになると思うんだ。東公爵の奥様が、夜会のためにわざわざ領地から出てくるのも大変だからね」
【長ミミ】「それを聞いて安心しました」
【男主人】「…………他には?」
【長ミミ】「私の身分ですが、どのようになっていますか? まさか、使用人の娘です。と紹介するわけにはいかないでしょう……ご主人様、どうして“やばっ、忘れてた”という顔をなさってるのでしょうか?」
【男主人】「えーあー、そこは、あれでー……」
【長ミミ】「では、私は“棘の氏族”の氏族長の末の妹で男主人様に国家交流の一環でお世話になっている、と言うことにしてください」
【男主人】「え、それって身分の詐称になるんじゃ……」
【長ミミ】「大丈夫です。氏族長の末の妹とは、親しい仲ですので、後で知らせておきます」
【男主人】「まぁ、長ミミの言うことだから、信頼するけど」
【長ミミ】「それと、最後に……ご主人様、まだ私に言うべきことを言っていないと思うのですが?」
【男主人】「えーと……そのドレス、とっても似合っている……よ?」
【長ミミ】「まぁ、及第点、というとこですね」