第5話『長ミミさんが、ゼリーを作っていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「ん~♪ これ、美味しいね」
【長ミミ】「桃のゼリーです。ご主人様が甘いものがお好きと聞いたので用意してみました」
【男主人】「ゼリーか……そういえば、ゼラチンって、そこはかとなく卑猥な言葉な感じがしない?」
【長ミミ】「いえ、まったく」
【男主人】「いや、だって、ゼラチンだよゼラチン! 是裸チンって書くともう超絶卑猥じゃない!?」
【長ミミ】「あえて言わせてもらうなら、卑猥なのはご主人様の頭の中です」
【男主人】「ふっ…………ところで、明日、僕は休日なんだけど、長ミミも休みでいいよ?」
【長ミミ】「逃げましたね」
【男主人】「戦略的転進と言ってもらいたい」
【長ミミ】「まぁ、それで休日の話ですが……私は特に必要ありません」
【男主人】「それだと体が休まる時間がないんじゃない?」
【長ミミ】「いいえ、こう見えてもそれなりに自由な時間がありますので」
【男主人】「そうなの?」
【長ミミ】「はい。ご主人様は、食事の好き嫌いもなく、掃除もほどほどで文句は仰いませんので」
【男主人】「実際、長ミミの出してくれる食事はどれも美味しいからね。一緒の食卓についてくれるともっと嬉しいけど」
【長ミミ】「その件につきましては、『私流メイド道』に反するので申し訳ありませんが……」
【男主人】「それについて無理強いをするつもりはないよ。こうして話し相手になってくれれるだけでも十分だからね」
【長ミミ】「恐れ入ります」
【男主人】「でもさ、実家とかに顔を見せなくて良いの?」
【長ミミ】「それこそ必要ありません。私の生家は「森林と調和の国」にありますが、両親は逝去しておりますので」
【男主人】「あー、ごめん、ちょっと考えなしだった」
【長ミミ】「大丈夫です。もう7年も前の話ですので……」
【男主人】「…………7年前?」
【長ミミ】「ええ」
【男主人】「それって」
【長ミミ】「はい、ご想像のとおりかと」
【男主人】「そっか……」
【長ミミ】「ご主人様。お気になさらずに、ゼリーのお代わりはいかがですか?」
【男主人】「まだあるの? じゃあ、もうちょっともらおうかな」
【長ミミ】「はい、しばしお待ちください」