第56話『二人で、猫ミミちゃんの話をしていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「あれ? 猫ミミは?」
【長ミミ】「猫ミミちゃんでしたら、本日は休日です。しっかりと自分の分の仕事も覚えてくれましたし、元々、この家の家事は私一人でも十分でしたから、今は数日ごとに休日を取らせています」
【男主人】「ん、その辺りは長ミミに任せてるからね。猫ミミはどこかに出かけてたの?」
【長ミミ】「最初の頃は街の観光をしていたみたいですが、最近は通える場所ができたみたいです」
【男主人】「いいことだね」
【長ミミ】「ええ、今日も手作りのクッキーを持って、嬉しそうに出かけました」
【男主人】「…………え?」
【長ミミ】「いかがなされましたか、ご主人様?」
【男主人】「それって、もしかして、デート……とか? あ、相手は、どこのどいつだっ!?」
【長ミミ】「ご主人様落ち着いてください。年頃の娘を持つ父親みたいなことを言っています」
【男主人】「いや、だって、嬉しそうに手作りのクッキーを持って、だなんて……」
【長ミミ】「手作りのクッキーが恋人の証なら、私とご主人様は新婚夫婦になってしまいます」
【男主人】「いや、それは……」
【長ミミ】「『ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?』とか、言われたいのですか?」
【男主人】「うっ……」
【長ミミ】「言いませんけど」
【男主人】「なら、訊くなー!!」
【長ミミ】「猫ミミちゃんの行き先は下町の孤児院です。どうも、以前に世話なっていた孤児院を思い出すそうで、最近はオヤツの差し入れなどをしているようです。クッキーの材料費も自分の給金から出していました」
【男主人】「知ってるなら、最初からそう教えてくれればいいのに……」
【長ミミ】「ところでご主人様、私からもご主人様にお訊きしたいことがあります」
【男主人】「なに?」
【長ミミ】「猫ミミちゃんから“寝込みのいただき方”を教えて欲しいと言われたのですが?」
【男主人】「…………」
【長ミミ】「ご主人様が、私から教わるように言われたようですが?」
【男主人】「…………」
【長ミミ】「ご主人様、私も“子供の作り方”なんかを実践を交えず、具体的に口頭でご主人様から教えていただきたいな、とか思いますが?」
【男主人】「……何の嫌がらせだーーー!!」
【長ミミ】「愛の嫌がらせです」