第51話『猫ミミちゃんは、知らないでいた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【猫ミミ】「おはようございますー! ご主人さまー!」
【男主人】「……ん、あ、もうちょっと寝かせて……」
【猫ミミ】「えっと、『あんまりダダをこねると寝込みをいただいちゃいます』よー!!」
【男主人】「頂くなっ! お願い、長ミミに言われた台詞をそのまま言うんじゃありません……」
【猫ミミ】「お寝坊さんなご主人さまがいけないんだよ?」
【男主人】「くっ……そんな純粋な目で見ないで、僕の負けだからっ!」
【猫ミミ】「あたしの勝ちー。でも、ダダをこねると、なんでシチューを食べるのかな?」
【男主人】「うん、まぁ、煮込みじゃなくて寝込みね。詳しい意味は長ミミに教えてもらって」
【猫ミミ】「ご主人さまは教えてくれないの?」
【男主人】「長ミミのほうが色々と教えやすいと思うから……着替えは、それ?」
【猫ミミ】「うん。ところでご主人さま、その、長ミミさんとケンカしたの?」
【男主人】「なんでそう思った?」
【猫ミミ】「んっと、長ミミさんがね。ご主人さまのことを呼ぶ時に少し変だった」
【男主人】「喧嘩っていうか、うーん、なんだろ?」
【猫ミミ】「???」
【男主人】「猫ミミは、僕のこと好きって言ってくれるけど、僕と結婚したい?」
【猫ミミ】「結婚……うーん、ご主人さまとなら、結婚してもいいよ? アイジンだし!!」
【男主人】「あー、アイジンの正しい意味も今度、長ミミに教えてもらおうね……」
【猫ミミ】「う、うん?」
【男主人】「僕はね。“誰かと結婚したい”って思えないんだ。いや、小さい頃は違ったはずだから、思えなくなった、かな? 今の僕は誰かと一緒になるのが怖い」
【猫ミミ】「なんで? ご主人様はあたしたちと一緒にいるよ? それに……あたしに、この家に居る時は安心していいって言って、くれた……よ?(うる」
【男主人】「あー、ごめん、ちょっと言い方が悪かった! その、泣かないでっ!(ぎゅ」
【猫ミミ】「うくっ……(ぎゅ~~」
【男主人】「結婚するってことはさ、その、家族を……子供を作るってことなんだ。それでね、ぼくは、その事から逃げ出したいんだ。だから、ちょっと長ミミに怒られちゃってね」
【猫ミミ】「長ミミさんに怒られたの?」
【男主人】「多分ね」
【猫ミミ】「だったら、ご主人さま……ごめんなさい、しないとダメだよ?」
【男主人】「ぷっ……そうだね、怒られたら、ごめんなさいしないと、だね」