第47話『妖艶女と、乾杯していた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【長ミミ】「ご主人様から言付けを伺いました。私をお呼びでしょうか?」
【妖艶女】「ああ、呼び立てて悪かったな。とりあえず一杯付き合ってくれないかい」
【長ミミ】「……では、一杯だけ」
【妖艶女】「何について乾杯しようかねぇ」
【長ミミ】「ご主人様の女難祓いを願って、ではいかがでしょう?」
【妖艶女】「ぷっ、それじゃあ、アタイたちの出会いと男主人の鈍感さに乾杯(グイッ」
【長ミミ】「乾杯(コクコク」
【妖艶女】「ぷはー、お、あんたも行ける口だね。もう一杯……」
【長ミミ】「ありがとうございます。それで、本題は何でしょうか?」
【妖艶女】「そう急かすなよ。あんたに確認したいことがあってね……“棘の氏族”って知ってるかい?」
【長ミミ】「……「森林と調和の国」における有力六氏族の1つですね。集落が国の南、隣国との境に位置するため、国では最も好戦的な氏族と記憶しております」
【妖艶女】「ほぉ、眉一つ動かさないとは見事なもんだ」
【長ミミ】「質問はそれだけでしょうか?」
【妖艶女】「おいおい、アタイがカマを掛けてるんだから、少しくらいは反応してくれよ」
【長ミミ】「はて? カマを掛けられるような覚えはありませんので」
【妖艶女】「主人が主人なら、使用人も使用人だ……ふてぶてしいったらない」
【長ミミ】「お褒めいただき有難うございます」
【妖艶女】「誰も褒めてないって……その様子じゃ、喋るつもりはないんだろうね」
【長ミミ】「私が“棘の氏族”に所属している、と言うことですか?」
【妖艶女】「って、喋るのかい!」
【長ミミ】「妖艶女様が聞きたそうでしたので、特別に隠しているつもりはありませんし」
【妖艶女】「この時期に、わざわざ王都まで……あんたほどの力がある魔術師が来たのは偶然か?」
【長ミミ】「さて、これから起こることは全て偶然で、起こったことが必然ではありませんか?」
【妖艶女】「やれやれ……確かにこれじゃあ、男主人様の手に余るわけだ」
【長ミミ】「あえて言うとしたら、私はご主人様を裏切ることだけはありません」
【妖艶女】「ふんっ、嘘つきは“自分が嘘つきだ”っては言えないんだよな」