第45話『男主人は、報告を受けていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【妖艶女】「あっはっは、まったく面白いもんを見せてもらったよ」
【男主人】「別に見せもんじゃないんだけどね……はぁ」
【妖艶女】「“お喋り”の報告だけに来たつもりだったんだけどね。ご馳走さん」
【男主人】「いえいえ、お粗末さま」
【妖艶女】「とりあえず、西は傭兵の募集について目処がついたみたいだね。早ければ15日後、遅くとも20日後には進軍を始めそうだよ」
【男主人】「開戦は回避できない……か」
【妖艶女】「王子様は最近とんとご無沙汰みたいだけどさ?」
【男主人】「王宮の議会では『戦争が起こるはずがない』と頑なに主張する方が何人かいてね」
【妖艶女】「……7年前の過ちをまた繰り返す気か。そんな主張をするヤツが本当にいるのかい?」
【男主人】「コレが嘘や冗談だったら、どれだけ良かったか」
【妖艶女】「どうするんだい?」
【男主人】「さてね。僕は王子様直属の師団長だからこそ、独断で動くことはできない立場だからね」
【妖艶女】「王子様の声が掛かったら動けるように準備万端で待機ってか?」
【男主人】「いや、王子様一人の独断でも動かせないのが軍隊ってヤツなんだよ」
【妖艶女】「はっ、面倒なことだ……ケンカは最初の一発が肝心だろ?」
【男主人】「ぷっ……分かりやすくていいね」
【妖艶女】「この世で分かりにくいのは、酒飲みの説教と男女の恋模様だけで十分さ」
【男主人】「……ところで、なんでにじり寄って来るのかな?」
【妖艶女】「……ふふふ、分かりやすく態度で示してるのさ」
【男主人】「……そういうことはしないって言う話じゃなかった?」
【妖艶女】「……アタイ~、少~し酔っちゃったみたい~」
【男主人】「嘘つけっ!! 飲み勝負を挑んできた騎士を3人連続で潰したって話を知ってるからな!!」
【妖艶女】「あらま、古い話を持ち出して、酔ったのは男主人様との雰囲気せいさ……アタイに恥をかかせんなよ」
【男主人】「…………今晩中に僕を落とせるにいくら賭けた? 1千イェン? 1万イェン?」
【妖艶女】「うっ! やだねぇ、いつもの冗談じゃないか、あははは」
【男主人】(長ミミ、アドバイスありがとう……)