第43話『女の戦いが、始まっていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【妖艶女】「それじゃあ、まぁ、男主人の健康とかを適当に願って、乾杯(カラン」
【副官女】「か、乾杯……(カラン」
【男主人】「一応、ありがと……(カラン」
【妖艶女】「綺麗な氷だね。これは男主人が作ってるかい?」
【男主人】「いや……多分、長ミミが自分で作ったんじゃないかな」
【妖艶女】「エルフ族なら魔術を使えてもおかしくはないけど……それでメイドとは、随分と酔狂な話だね」
【副官女】「え? なんでですの?」
【妖艶女】「……あんた、王国軍での男主人の部下なんだろ?(呆れ」
【副官女】「そ、そうですが……」
【妖艶女】「魔術を使える人は少なくはない。ただ、製氷を行なえるるほど精密な魔術を使える人、となると話は別だ。それほどの腕の立つ魔術師なら、王国軍に王立研究所、大商会のお抱え魔術師と引く手は数多さ」
【副官女】「そのくらいの魔術なら、私も使えますけど……?」
【妖艶女】「……男主人、この子はどこの箱入り娘だい? 自分が庶民と違うって自覚がないだろ?」
【男主人】「生粋の王国貴族の家柄でね。本来なら僕の部下に納まっているような子じゃないんだけど」
【副官女】「男主人様、家は関係ありません! 私は自分の意志で男主……じゃなくて、第十一師団への配属を希望したんです! そりゃあ、配属の際にちょっとお父様にお願いしましたけど……(もじもじ」
【妖艶女】「いいとこの嬢ちゃんってのは、間違ってないんだね」
【副官女】「……さっきから、黙って聞いていれば、そういう貴女はどちら様ですの?」
【妖艶女】「おや、アタイは妖艶女っていうんだ。男主人は、うちの娼館のお得意さまでね」
【副官女】「娼館…………ということは、男主人様と……!?」
【男主人】「誤解されてるかもしれないから言っておくけど、僕は客として行っているわけじゃないからね」
【副官女】「失礼しました。男主人様の言葉を信じます」
【妖艶女】「はんっ、あんたも娼婦を見下すような人種なのかい」
【副官女】「貴女がどこで何をしようと、別に……そういう職業が必要であることは習っていますし」
【妖艶女】「その口調が見下してるってんだよ」
【副官女】「見下しているつもりも、見下しているとも言っていませんが? “私が貴女を見下している”と感じている貴女こそ、自分自身のことを見下しているんじゃありません?」
【妖艶女】「ほー、結構言うねぇ、お嬢ちゃん。ふふふ、気に入ったよ」
【副官女】「あら嬉しいです。うふふ、私も貴女とは上手く付き合えそうです」