第31話『男主人は、少し酔っていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【長ミミ】「ご主人様、どうぞ水です」
【男主人】「ありがと……(ごくごく)……ぷはっ」
【長ミミ】「お代わりはいかがですか?」
【男主人】「ん、もう十分」
【長ミミ】「かしこまりました」
【男主人】「…………あのさ、一つ聞いてもいいかな?」
【長ミミ】「なんでしょうか?」
【男主人】「君は何者なのかな?」
【長ミミ】「……ご主人様、酔っていらっしゃるのですか? それとも若年性痴呆ですか?」
【男主人】「別にボケてない……けど、まだ少し酔ってるかもね」
【長ミミ】「ふむ、私は私ですが、何を持って私と証明するのか……とても難しい命題ですね」
【男主人】「別に哲学的な質問をしているわけじゃなくてね」
【長ミミ】「私は、エルフ族のメイドの長ミミです……では、いけませんか?」
【男主人】「いけない、って訳じゃないんだけどさ。僕のこと知らないわけじゃないんでしょ?」
【長ミミ】「ええ、ご主人様のことならホクロの数まで……」
【男主人】「それは嘘だよね? いや、嘘だと言ってくれる!?」
【長ミミ】「では、嘘ということで」
【男主人】「長ミミは、微妙に僕の不安を煽る天才だね!」
【長ミミ】「と、このくらいにはご主人様のことを知っていると自負します」
【男主人】「じゃあ、僕が大量殺人者であることも知っているんだよね?」
【長ミミ】「ええ、一昼夜で敵軍の兵士1万とんで88人を殺した“救森の魔術師”様」
【男主人】「怖くないのか?」
【長ミミ】「何が怖いのでしょうか?」
【男主人】「僕は簡単に人を殺すことができるんだよ?」
【長ミミ】「ご主人様、嘘は私の担当ではありませんでしたか?」
【男主人】「嘘……? 別に嘘なんか言ってない」
【長ミミ】「殺せるのは本当でも、“簡単に”だなんて、そんな悲しい嘘をご主人様の口から聞きたくありません」