第35話『男主人が、問い詰められていた』
■草原と平穏の国:酒場
【白髪女】「それじゃあ、かんぱーい♪(ゴクゴク」
【男主人】「乾杯ー……(ちびり」
【部下男】「乾杯ー……(ごくり」
【白髪女】「あー、この一杯のために長生きしてるねぇ。(ひょいパク)ん、この揚げ物も美味いねぇ」
【男主人】「それで師匠、僕たちは何のために呼ばれたのでしょうか?」
【白髪女】「久しぶりに愛しい弟子とのこういう場所での語らいを楽しみにだねぇ」
【男主人】「でしたら、わざわざ王宮まで来る必要はなかったと思うのですが……」
【白髪女】「抜き打ち視察ってのは、事前に知らせるもんじゃないんだよ」
【部下男】「何を視察するつもりだったんですか!?」
【白髪女】「まぁまぁ、とりあえずアンタに聞きたいことがあるんだけどいいかい?」
【男主人】「ええ、なんでしょう?」
【白髪女】「誰を嫁さんにする気なんだい?」
【男主人】「……はぃ?」
【白髪女】「きちんと責任は取りなよ。避妊してればいいってもんじゃないからねぇ」
【男主人】「ちょ、ちょっと待ってください! 何の話ですかっ!?」
【白髪女】「恋バナ?」
【男主人】「可愛く言っても似合いませんから、師匠!! 大体誰を嫁するんですか!」
【白髪女】「長ミミは夫を立てるいい奥方になりそうだねぇ。猫ミミは元気な子を生みそうだ。もちろん異種族婚は難しいかもしれないけど、そこは愛で乗り切れ。あと、さっき王宮で見た娘も満更じゃなさそうじゃないかい? 不誠実なのは、アタシが許さないよ」
【部下男】(そういえば、お祖母様はこういう方だった……恋愛至上主義で、妙な所で勘が鋭いし)
【男主人】「まず断っておきますけど、長ミミたちはあくまで使用人で、恋人でも愛人でもありません! それに王宮のって副官女のことですか? あくまで大事な副官ですよ、彼女は!」
【部下男】(副官女がこの場にいなくて良かった……絶対ややこしいことになってた)
【白髪女】「それでもアタシの弟子なのかねぇ。アンタほどの家禄なら、いっそ「3人とも幸せにしてみせる」位は言うもんだよ?」
【男主人】「言いませんっ!! それに、今は恋愛とかしているしている時じゃないですから!」
【白髪女】「まだまだ青いねぇ。恋愛は“する”もんじゃない、“している”もんさ」
【男主人】「…………本当に何のために呼ばれたんですか?」
【白髪女】「アンタの将来を心配してかねぇ?」