第32話『長ミミさんが、言い負けていた』
■草原と平穏の国:男主人邸(裏庭)
【猫ミミ】「はむはむ、おいしぃー♪」
【白髪女】「ふむ、生ハムを刻んでフレッシュチーズと混ぜ合わせてるんだねぇ。これは美味い」
【長ミミ】「白髪女さん、その、なんで私たちまで一緒に食事をしているのでしょうか?」
【白髪女】「そりゃ、アタシが命令したからだろうねぇ?」
【長ミミ】「なんでそんな命令をされたのでしょうか?」
【白髪女】「そりゃ、一緒に食事をするためじゃないかい?」
【長ミミ】「…………」
【白髪女】「ほら、アンタも食べなよ。この何の実か分からないジャムのサンドイッチも美味いよ」
【長ミミ】「それはニンジンのジャムです」
【白髪女】「なるほど、言われてみれば確かにニンジンの風味がするねぇ」
【猫ミミ】「ご主人さまはニンジンが嫌いなんだって、だから長ミミさんが色々頑張ってるんだ!」
【白髪女】「ああ、ヤツの食わず嫌いを直すためかい。アタシも一時期頑張ったんだけど、全力で抵抗されたねぇ」
【長ミミ】「ええまったく嫌いだからといって、こっそり残すだなんて子供っぽい」
【白髪女】「もっともアタシも無理やり食べさせようとしたから、お互い様かねぇ」
【猫ミミ】「あたしは何でも残さず食べるよ!」
【白髪女】「猫耳ちゃんは偉い偉い。アタシは長ミミほど手間を掛けたりはしなかったけど」
【長ミミ】「……その、悔しくありませんか? せっかく作った料理が残されると」
【白髪女】「なるほどねぇ。ただ料理を仕事と割り切っていれば、そんな気持ちにはならないもんだよ」
【長ミミ】「私はあくまでメイドの仕事として料理をしていますが」
【白髪女】「うん、確かに料理はメイドとしての長ミミの仕事なんだろうねぇ」
【長ミミ】「それは、先ほどの言葉と矛盾をしませんか?」
【白髪女】「もう少し詳しく説明が必要かい?」
【長ミミ】「よろしければ、是非」
【白髪女】「じゃあ、交換条件だ。ほら、一緒に昼食を楽しんで、デザートが終わったら話してあげよう」
【長ミミ】「…………いただきます」