第22話『長ミミさんは、気付いていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【長ミミ】「ご主人様、少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」
【男主人】「ん? どうしたの、改まって」
【長ミミ】「お聞きしたいことがありまして……その魔術の話なのですが」
【男主人】「僕が答えても問題がない範囲ならいいけど、……魔術技法は国の機密に触れることもあるから」
【長ミミ】「申し訳ありません」
【男主人】「いや、謝ることじゃないけど。で、何が聞きたいの?」
【長ミミ】「婉曲的に言えば、“汚れを取る魔術”を知りたいのですが……」
【男主人】「ふ~~む」
【長ミミ】「…………分かりませんか?」
【男主人】「“洗濯に使う”ってわけじゃないよね?」
【長ミミ】「それはそれで便利そうなのですが…………」
【男主人】「《魔力除去》系と呼ばれる魔術があるよ。術者の力量にも関係してくるけど、基本的に等級の低い単純な魔術しか打ち消すことができない」
【長ミミ】「…………」
【男主人】「理論上は、全ての魔術が魔力によって起こされる現象である以上、魔力で打ち消すことは可能だけど、何事も『起こしたことを元通りに無かった事にする』のは大変なんだ」
【長ミミ】「ご主人様でも、ですか?」
【男主人】「うん。多分、長ミミが期待しているレベルは無理」
【長ミミ】「そうですか…………」
【男主人】「猫ミミのことが、そんなに気になる?」
【長ミミ】「……やはり、分かりますか?」
【男主人】「まぁね。むしろ、長ミミがよく気づいたなぁと思うよ」
【長ミミ】「ふふふ、私は完璧なメイドですから」
【男主人】「エルフ族なら先天的に魔術師の素質があるからね。どこまで分かってる?」
【長ミミ】「いえ、“何かがおかしい”というのを感じただけです」
【男主人】「そこまで分かれば十分。後は僕に任せておいて、昔に同じようなことがあったから、多分大丈夫」
【長ミミ】「かしこまりました。お任せいたします」
【男主人】「ずいぶん、あっさりとしてるね」
【長ミミ】「ご主人様は、怒られないとニンジンを食べれないようなお子様で、少しエロくて、その割には女性に弱いややヘタレですが……私は信じてますので」
【男主人】「なんだかなぁ。ま、その期待には、応えれるように頑張らせてもらうよ」