第19話『お弁当が、赤く染まっていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「…………ふっ」
【部下男】「うわー、見事に真っ赤なお弁当ですね」
【男主人】「ニンジンのサラダ、ニンジンのグラッセ、ニンジンジャムのサンドイッチ……」
【部下男】「それ、イチゴジャムじゃなくてニンジンのジャムなんですか? オレ初めて見ましたけど」
【男主人】「彼女のお手製っぽいから」
【副官女】「彼女って、その、例の使用人さんですか?」
【男主人】「うん」
【副官女】(ええっ!? だって、使用人さんよね? ただの使用人さんじゃなかったということ? 何あの愛情たっぷりなお弁当は!! …………は、もしかして、いわゆる行儀見習いだったけど、お手つき済みの未来は団長婦人様っ!? 私も明日から……いや、相手の得意な戦場で交戦するのは下策、なら、どうしよう!?)
【男主人】「(小声)……彼女、どうかした?」
【部下男】「(小声)いや、気にしないでください」
【副官女】「とりあえず、私も負けませんから! 頑張りますから!」
【男主人】「おおう、頑張って!」
【副官女】「はいっ!!」
【部下男】(あ~、なんだろう、この微妙な居たたまれなさは……)
【男主人】「ところで、二人とも、これ食べない?」
【部下男】「あー、オレらが食べちゃまずいのでは?」
【男主人】「そんなことはないさ」
【部下男】「だってそれ、男主人様への“罰”でしょ?」
【男主人】「うぇっ!?」
【副官女】「罰? なんのことか説明して」
【部下男】「いやー、そのー、使用人の娘さんを辱めた罰で、苦手なニンジン尽くしのメニューを食べさせられてるという話で……」
【副官女】「お手つき済み確定!? ああっ……(ふらふら」
【男主人】「おおい! なんでそんな僕の個人的な情報が駄々漏れなんだっ!?」
【部下男】「いや、オレ、MSNのメンバーですんで」
【男主人】「マジで存在するのか、『メイドさんネットワーク』……」