第17話『あっさりと、騙されていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「あー、久しぶりに食べたぁ……」
【長ミミ】「お疲れ様です。口直しにプティングをどうぞ」
【男主人】「なんか、今とっても子ども扱いされてない?」
【長ミミ】「気のせいではないでしょうか」
【男主人】「長ミミはさ、嫌いなものはないの?」
【長ミミ】「嫌いなものですか?」
【男主人】「うん、食べれないものとか」
【長ミミ】「ほとんど、ないと思いますね」
【男主人】「ほとんどって言うと、いくつかはあるんだ?」
【長ミミ】「ご主人様、そんなに私のことを知りたいのですか?」
【男主人】「い、いや単純に好奇心というか……?」
【長ミミ】「私はメイドですから、嫌いなものはないのです」
【男主人】「メイドだからって……クモとかヘビとかは平気?」
【長ミミ】「ヘビは少し硬いのが難点ですね。クモはまだ食べたことがありません」
【男主人】「いや、食べる話じゃなくて……ってか、ヘビは食べたんだ」
【長ミミ】「見た目で嫌う女性はいますが、きちんと下拵えすればれっきとした食材ですし」
【男主人】「その、見た目で嫌う女性ってのは少なくないんだけどね」
【長ミミ】「ちなみにゴキブリも冷静に対処できます。毒蜂と違って危険性は少ないですから」
【男主人】「怖いもの知らずだね」
【長ミミ】「まぁ、ご主人様、私にも怖いものはあります」
【男主人】「そうなの?」
【長ミミ】「あえて言うのでしたら、ですけれど……」
【男主人】「うんうん?」
【長ミミ】「えっと甘いチェリータルトが怖いです」
【男主人】「へぇ、甘いのが苦手なのか」
【長ミミ】「それから、渋い紅茶があればもっと怖いです」
【男主人】「…………お見逸れしました。今度、土産に買って参ります」
【長ミミ】「あらあら、今からとっても怖いです」