第157話『幸せな呪いから、目を覚ましていた』
■森林と調和の国:“棘”の集落(氏族長宅)
【男主人】「ん、んん…………」
【長ミミ】「!? ご主人様! 気が付きかれましたかっ!?」
【男主人】「ああ、戻ってこれた……か」
【長ミミ】「戻って?」
【男主人】「それより、僕が倒れてから、どのくらい経ってる?」
【長ミミ】「今はもう日が落ちるくらいです。……無理に起き上がらないで下さい!!」
【男主人】「大丈夫、思ったよりは悪い気分じゃない。状況は?」
【長ミミ】「……堅騎士様が中心となって、投降兵の収容と鉱山軍との調停の準備をしています。最も事態を収拾させる途中で、一般兵による上官への殺傷行為などがあり、まだ少し混乱が残っているようです。
それでも、今回の戦争は停戦に向かう流れです。ご主人様が仰っていた「鉱山と武勇の国」の政変が決め手だったようです。
この後は三ヶ国同士の上層部による話し合いによって決着をつける形になると思われます」
【男主人】「そっか……僕の出番は、もう終わり、かな?」
【長ミミ】「はい、ですから、ゆっくりと休まれてください。怪我は私が魔術で治せたのですが、今まで正体不明の“呪い”のせいで、ご主人様の意識が戻らなかったのですから……」
【男主人】「いや……多分、もう大丈夫だよ。“呪い”はもう解けていると思う」
【長ミミ】「ご主人様が解呪されたのですか?」
【男主人】「なんとかね」
【長ミミ】「流石です」
【男主人】「(小声)……多分、僕1人の力じゃなかったけど」
【長ミミ】「何か仰いましたか?」
【男主人】「いいや……喉が渇いたな。お茶もらえる?」
【長ミミ】「あ、はい、ただいまっ!!」
SE(駆けて行く音):パタパタパタ……
【男主人】「“欲望を以って心を閉ざす呪い”といった所か……それで、あんな空想に囚われた」
【男主人】「いや、まったく……自分の過去の失態を見せ付けられたみたいで、少しばかり恥ずかしいな」
【男主人】「…………戦争は終わった、か」