第153話『囚われの姫を、救出していた』
■草原と平穏の国:郊外の屋敷
【給仕娘】「おや? どうしたのかしら……? 囚われのお姫様がいる部屋は向こうよ?」
【妖艶女】「……急に、どうぞお通り下さいと言われて、どうもどうも、と進めるわけがないだろ」
【給仕娘】「ん~~、望み通りサックリ殺してあげてもいいのだけど……」
【妖艶女】「!?」
【給仕娘】「アナタを殺そうと思えば、いつでも殺すことができたの。そんなことも分からないのかしら? おバカさんは、ちょっとワタシ好みではないわね」
【妖艶女】「一つ聞かせてもらおうか、なんでアタイを見逃す……?」
【給仕娘】「ああ、そっか、そんなことを気にしてたの!
アナタが男主人の手駒だと分かったからよ。同じ化け物として、カレには敬意を払っているの。
別にアナタだけなら、さっさと殺してもいいんだけどね。カレが関わっているから、サービスしてあげているのよ? 運が良かったわね……これ以上ワタシをイライラさせるつもりなら、話の続きを聞く?」
【妖艶女】「……いいえ、あなたの気まぐれかも知れないけど、一応感謝するわ」
【給仕娘】「ふふふ、どういたしまして」
【妖艶女】(運が良かった……癪だけど、今は人質とやらを確認するのが先だ)
SE(扉を開く音):カチャ、キィ……
【人質娘】「誰……、ですか?」
【妖艶女】「夜分に失礼します。安心してください、アタイは貴女の味方だ。起きていてくださってちょうど良かった。ここから逃げるぞ」
【人質娘】「ダメ、わたしが逃げたら、あの人に迷惑が掛かっちゃう」
【妖艶女】「逃げたら、迷惑が掛かる?」
【人質娘】「ええ、わたし逃げたら、あの人にヒドイことをすると……」
【妖艶女】「…………なるほど、それには逆もあるな。きっと、その貴女がいうあの人も、貴女のことを盾にして、何か脅されているんだ」
【人質娘】「そんな……じゃあ、わたしが大人しくしていたことは無駄、だったんですか?」
【妖艶女】「いや、それはそれで良かった。もし貴女が暴れたり、反抗しようと思ったら、貴女がひどい目に合わされていたな。とにかく、アタイを信じて一緒に逃げてくれるか?」
【人質娘】「……はい、分かりました」
【妖艶女】「ところで、貴女のあの人とやらは、いったい何処のどいつなんだ?」
【人質娘】「ええ、あの人の名前は……」