第150話『女騎士は、人の思いと力を信じていた』
■森林と調和の国:鉱山軍野営地
【男主人】『拝聴せよ……』
【見張兵】「声が……聞こえる?」
【男主人】『我は、“救森の魔術師”と呼ばれる者なり、鉱山軍及び森林軍全ての兵士に告ぐ』
【巡回兵】「救森の…………“不死の魔人”の声かっ!?」
【見張兵】「それは、7年前の戦争の……(ゾクリ」
【男主人】『拝聴せよ! 我が主より、この場にいる全ての兵士向けた言葉を!』
【騎士娘】『初めまして皆さん……』
【見張兵】「今度は女性の声と姿が……見える」
【巡回兵】「オレもだ……」
【騎士娘】『私は、草原と平穏の国の騎士娘と言います。皆さんにお願いがあります。武器を捨ててください。
この戦争は、私と“救森の魔術師”の名の下に預からせてください』
【見張兵】「預かる……?」
【騎士娘】『……人は群れなければ、弱い存在です。群れには“決まり”があり、“決まり”がなければ、群れることはできません。
しかし、皆さんは、自分が群れの一員であると同時に1人の人間であることを自覚していますか?
この戦争は片手に足るほどの人数の意思で、起こされたものでしょう。
しかし、その戦争を続けているのは、皆さん1人1人の意思であるはずです。
1人が武器を捨てただけでは戦争は終わらないかもしれません、10人でも無理です。100人でも足りないかもしれません。1,000人が武器を捨てたならば、少しだけ争いが減るかもしれません。10,000人が武器を捨ててくれたら、戦争が終わるかもしれません。
1人と10,000人の違いはどこでしょうか? 私はそこに大きな違いはないと思います。
10,000人が武器を捨てると言うことは、武器を捨てる勇気を持った1人が10,000人いたと言うことです。
だからこそ、私は、皆さんにお願いをするのです。武器を捨ててください、と』