第145話『計画のために、根回しをしていた』
■草原と平穏の国:王宮(王子執務室)
【副官女】「失礼します」
【王子様】「お? どうした?」
【副官女】「いま少しよろしいでしょうか? 男主人様からの手紙が届きました」
【王子様】「そっちの方が重要だな。見せてくれ」
【副官女】「こちらです」
【王子様】「(ピッ)…………むぅ(悩」
【副官女】「……いかがされましたか?」
【王子様】「副官女、今、担当している中で急ぎの仕事はあるかな?」
【副官女】「3人分の日常業務とたまに2人への後方支援を行なっていますが、とくに急ぎの仕事は……」
【王子様】「よし、1つ仕事を任せた! お父上の東公爵と相談して、この仕事に当たってもらいたい」
【副官女】「えっと、この仕事と言われましても……」
【王子様】「この手紙を読んでみろ」
【副官女】「拝見させていただきます…………これは、本当の情報でしょうか?(悩」
【王子様】「男主人がボクたちに嘘をつく理由がない、それにその手紙には、ちゃんとボクと男主人の間にしか分からない符丁が書かれているから、偽造とも考えにくい」
【副官女】「しかし、「鉱山と武勇の国」の政変が起こるから、それに合わせて戦争を停戦に導くなんて……」
【王子様】「可能、だろうね」
【副官女】「…………」
【王子様】「どういう手段がとるかは分からないけど、鉱山軍総勢約8万人のほぼ全てを投降させるつもりだ」
【副官女】「投降させた場合、食料などにその帰国に要する必需品の準備と支給支援、ですか……」
【王子様】「うん、すっごく面倒そうな仕事だよね」
【副官女】「…………概算でも相当な予算が必要になりますが」
【王子様】「まぁね、仮に兵士1人あたり帰国に2万イェン掛かるとして、約16億イェンか」
【副官女】「準備にも諸経費が掛かりますから……まず、その予算をどこから捻り出すか」
【王子様】「第十一師団に秘密の隠し予算とかあったりしない?」
【副官女】「ないとは言いませんが、“飢えたクマに一粒の小麦”という感じになります」
【王子様】「あ、そっか……あるところから出させればいいんだ」
【副官女】「心当たりがあるのですか?」
【王子様】「ん、叔父上はこの国でも有数の資産家だからね。この際、快く協力してもらおう」