第142話『長ミミさんが、秘密の作戦を持っていた』
■森林と調和の国:森林軍本部
【長ミミ】「お義父様に申し上げます。それならば、次期氏族長としての発言ならば、如何でしょう? 範例としては、緊急時において、氏族長と次期氏族長には、ほぼ同等の権限が与えられるはずです」
SE(ざわめく音):ザワッ
【長ミミ】「(小声)お待たせいたしました。ご主人様」
【男主人】「(小声)待ってないよ!? というか、何でここにいるのかな? それにお父様って!?」
【長ミミ】「(小声)もちろん、メイドですから……ご主人様、私に話をあわせてくださいませ」
【男主人】「(小声)え? お、おい……」
【偉ミミ】「長ミミっ! いくら氏族長直系の1人娘とはいえ、範例に従えば女性は氏族長にはなれん!」
【長ミミ】「そのことにつきまして、諸氏の方々には失礼なれど、この場を借りて発表したいことがあります。
男主人様、先日……“私の耳に触れたい”と仰られましたよね?」
【男主人】「ああ、確かに言ったが……」
【長ミミ】「その話、此の場を持ってお受けしたいと思います」
【男主人】「……?」
【偉ミミ】「っ!?」
【老ミミ】「ほぉ……」
【長ミミ】「範例に従えば、氏族長の第一子が女性だった場合、その伴侶を次期氏族長に据えるとあります。お義父様……」
【偉ミミ】「何を言う!! 人間族が次期氏族長だなどと認められるか! そもそも、いくら男主人殿とはいえ、お前と人間族との婚姻を認めん!!」
【長ミミ】「範例には、人間族が氏族長になってはいけないとは、一言も伝わっておりませんが?
それに、男主人様はエルフ族の古き慣習に従って“耳問い”をして下さり、私がそれを受けたのです。過去にもエルフ族と人間族と結ばれた前例はあり、範例にも問題はないはずです」
【偉ミミ】「だがっ!!」
【老ミミ】「まぁまぁ、偉ミミ殿……そう興奮召されるな。まぁ、どういう経緯はあれど、男主人殿がこの場において発言を続ける権利を得た。そういうことで、良いかの、お嬢さん」
【長ミミ】「老ミミ様の寛大なご配慮に感謝いたします」
【男主人】「(小声)……長ミミ、後で話がある」
【長ミミ】「(小声)かしこまりました。ひとまずは、私が支援できるのは、ここまでです。頑張ってくださいませ、ご主人様」