第15話『王子様の前で、報告していた』
■草原と平穏の国:王宮(王子執務室)
【王子様】「で、ボクの分の高級葡萄酒は?」
【男主人】「ありません。そもそも貴方の立場なら、高級葡萄酒なんて好きなだけ入手できるでしょう!!」
【部下男】「男主人様、いつものことです。気にしたら負けです」
【男主人】「ふ、君には苦労をかけるね」
【部下男】「そいつぁ、言わない約束ですよ、男主人様」
【王子様】「小芝居はその辺にして、とりあえず報告してくれ」
【男主人】「はい、まず西の所領の悪領主は殺人未遂と不正収賄と脱税の罪状で更迭しました」
【部下男】「不正金の見積もりについては、こちらです」
【王子様】「は~、まったく、これだけの金のために人生を終わらせなくてもねぇ」
【男主人】「金という毒はヒトを簡単に狂わせますから。ただ王子様は、その立場から“これだけの金のために”とは言ってはいけません」
【王子様】「ん、ボクの失言だった、許せ。それで裏は?」
【男主人】「残念ながら、確たる証拠は掴めませんでした」
【王子様】「個人的な見解でいい。オマエが考えていることを聞きたい」
【男主人】「悪領主が王弟派であったのは間違いないのですが……(視線を部下男に向ける」
【部下男】「近年、他の王弟派との連絡を取り合った形跡はありませんでした」
【王子様】「つまり、今回の件は完全なる単独行動と?」
【男主人】「いえ、国外の貴族と……連絡を取り合っていた可能性が残っています」
【王子様】「西の所領だったか。……さらにその西とすれば「鉱山と武勇の国」だな、わが国とは因縁浅からぬ」
【男主人】「あくまで可能性の話です」
【部下男】「残念ながら、こちらの方でも証拠となりえる情報は掴めていません」
【王子様】「その辺りについては諜報部も動くように手配しとく。引き続き二人ともこの件は頼むよ」
【男主人】「了解です」
【部下男】「御意」
【王子様】「…………ところで、キミのとこのメイドさんは元気かい?」
【男主人】「王子様も長ミミを知っているのですか?」
【王子様】「うん、キミの出張中に顔を見に行って少しお喋りをしたんだけどね」
【男主人】「そんなこと一言も……ああ! 盛りのついた犬!」
【王子様】「ぶっ!?」
【部下男】「は???」