第141話『偉い人たちを、説得しようとしていた』
■森林と調和の国:森林軍本部
【男主人】「皆様、私の急な申し出にも関わらず、お集まり感謝いたします」
【偉ミミ】「英雄である男主人殿の頼みだ、無下にはできん。それで、我々森林軍の幹部を集めての話とはなんだろうか?」
【男主人】「この度、一つの案を持って参りました。それについて、皆様の同意を頂きたく思います」
【老ミミ】「7年前と同じく火計を用いるつもりか?」
【男主人】「……あの時の策により、エルフ族の宝たる森に傷を負わせてしまい、もっと良い策があったのではないかと、忸怩たる思いです」
【老ミミ】「昔のことについては、すでに決着がついておる。ワシらとていまさら蒸し返すつもりはない。しかし、それを再びとなると……」
【男主人】「安心をしてください。今回の案も戦争を終わらせるための策ではありますが、火計ではありません」
【偉ミミ】「その策を用いれば、此度の戦争も勝てると?」
【男主人】「いいえ、私が提案したいのは、戦争に勝つための策ではありません」
【偉ミミ】「……しかし、戦争を終わらせると……」
【男主人】「はい、戦争は終わらせます。皆さん、今回の戦争を“無条件で停戦”することを認めては頂けないでしょうか?」
SE(ざわめく音):ザワザワッ……
SE(台を叩く音):バンッ!!
【偉ミミ】「“無条件で停戦”だとっ!? それがどういう意味なのか分からぬのか!?」
【男主人】「分かっております」
【偉ミミ】「いいや、分かっていたらそんな言葉が口から出てくるものか! 仕掛けられた戦争に、こちらから停戦を申し込むなぞ、それは敗北を宣言したのも同じではないか!!」
【男主人】「いいえ、同じではありません……此方から、向こうが“停戦することを許してやる”のです」
【偉ミミ】「『停戦してやるから戦うのをやめよう』といって聞く相手が攻めてきたりすると思ってか!? 敵をどうやって説得させる!?!」
【男主人】「私が説得させます」
【偉ミミ】「もし、仮に説得ができたとしよう。我々の、踏み躙られた兵士や田畑はっ! 今回の戦争に置ける損害の賠償はどうなるっ!!」
【男主人】「……分かりました。賠償については、向こうとの交渉の場を設けさせましょう」
【偉ミミ】「そういう問題ではないっ!! そもそもが戦争を仕掛けられたのは我らが国であって、男主人殿は部外者であるから、そのような提案ができるのだ!!」
【男主人】「確かに、私が属している国は「平穏と草原の国」でありましょう! しかし、「森林と調和の国」とは盟友たる国であり、私も戦争を憂う者として……」
【偉ミミ】「戦争をしているのは、我らが国と「鉱山と武勇の国」だ!!
それとも男主人殿は我が国に一兵として仕えてみるか? その気概が少しでもあるならば、話の続きを聞いてやる。もっとも、今回のように我々氏族長に意見できるようになるまで、何年かかるかは分からぬがな」
【男主人】「っ……」