~幕間~『兵士達』
■森林と調和の国:鉱山軍野営地
SE(茂みの音):ガサガサッ
【見張兵】「ひゃっ!?」
【巡回兵】「落ち着け、オレだ」
【見張兵】「な、なんだよ……脅かすなよ」
【巡回兵】「大丈夫か? この間、夜中にうなされてただろ?」
【見張兵】「……怖いんだ。いつ敵が襲ってくるのか、もしかしたら、あの木の陰から矢が飛んでくるんじゃないかって……お前は怖くないのかよ?」
【巡回兵】「オレだって怖いさ。けど、ここは軍の側面だ。まだ安全な方じゃないか」
【見張兵】「そうは言ったってな! いつ、全面衝突になるのか分からないんだろ!?」
【巡回兵】「そりゃ、そうだが……」
【見張兵】「俺はよ……農家の三男でさ、村に徴兵令が出たときに、自分から志願したんだ。軍に来れば、それだけ食い扶持が減るだろう? だからさ……」
【巡回兵】「オレだって似たようなもんさ」
【見張兵】「死ぬのはやっぱイヤだ……けど、このまんまじゃ、いつか死ぬ……だったら、いっそ、軍から脱っそ」
【巡回兵】「言うな! それ以上言うなら、オレはお前を止めなくちゃならない」
【見張兵】「っ!? いいじゃないか、どうせだったら、一緒に……」
【巡回兵】「言うなって言ってんだろ!! やるなら、オレに関わらないようにやってくれよ。失敗した時にとばっちりを食らうのは勘弁だからな」
【見張兵】「…………」
【巡回兵】「バレたら、その時点で死ぬぞ。バカなことを考えずに、このまま生き残ることを神に祈った方が懸命だぜ?」
【見張兵】「だけどよ……こんな恐ろしい夜を、あと何日過ごせばいいんだ……」
【巡回兵】「そんなこと、オレに分かるかよ……」
【見張兵】「……ヤギの乳で作ったチーズをさ」
【巡回兵】「ん?」
【見張兵】「火で少し焦げるくらいに炙って、酢漬けのキャベツと一緒にパンで挟んで食うんだ」
【巡回兵】「……美味そうだな」
【見張兵】「ああ、俺の大好物だ」
【巡回兵】「オレは、あれだな。塩をたくさん振った鶏肉に、小麦粉の衣をつけて、油で揚げたヤツが好きだな。アツアツを頬張ったところに、なみなみとジョッキに注いだエールに口をつけるんだ」
【見張兵】「それは、俺も一度、食ってみたいな」
【巡回兵】「食えるさ。そう信じていれば、きっとな」