第140話『停戦、という名の理想を語っていた』
■森林と調和の国:“棘”の集落(特務隊天幕)
【射手男】「それで、どうするつもりっすか?」
【男主人】「これは堅騎士殿にも話したことなんだが、「鉱山と武勇の国」で政変が起こる」
【騎士娘】「政変っ!? それは正確な情報ですか!?」
【男主人】「ああ、近いうち新しい皇帝が生まれ……いや、もしかすると、皇帝じゃないかもしれないけど、「鉱山と武勇の国」のトップが入れ替わる。
そうなれば、鉱山軍も、このままここで戦争を続けるわけには行かなくなる」
【射手男】「その混乱を付いて攻めれば、こっちの勝利っすね!!」
【男主人】「……いや、攻めない。停戦、もしくは投降を呼び掛ける」
【射手男】「なっ!? それは甘くないっすか!」
【男主人】「客観的に見れば、甘いかもしれないけど……けど、できるだけ人を殺さず、この戦争を終わらせるんだ。それが一番面倒で、一番カッコイイだろ?」
【騎士娘】「…………」
【射手男】「そんなの理想どころか、妄想に近いっす!! そもそも、おれらは援軍であって、実際に戦っているの森林軍っすよ? この戦争は一方だけを収めても終わりにはならないっす!」
【男主人】「勿論、分かっているさ。この作戦を取るためには、まず森林軍の総大将である“棘”の氏族長に会って、理解を得る必要がある」
【射手男】「その通りっす! こんな状況で協力してもらうことなんてきっと不可能っす!」
【男主人】「僕は、戦場跡で覚悟は決めたって言っただろう? もし何かを望むなら、自分から動かなければ、その望む何かを動かせる可能性はないままなんだ」
【騎士娘】「…………」
【射手男】「…………」
【男主人】「とまぁ、偉そうなことを言った所で、2人の同意も得られないような作戦は、失敗するかもね」
【騎士娘】「……私は、その……男主人様が言ったとおり、無駄に人が死なずに戦争が終わるならば、その作戦を信じてみたい。ろくに剣も力も振るうことのできない私だけど……」
【男主人】「騎士娘、人を守るために必要なことは、剣でも力でもない、まずは気持ちだよ」
【騎士娘】「男主人様……」
【射手男】「……分かり合った顔で見詰め合って、結局、篭絡されてるっすね」
【騎士娘】「なっ、何を言う! 私は男主人様の考えに感銘を受けただけであってな……」
【射手男】「おれは、どっちでもいいっすよ? 反対はしたっすけど、やれるものならやってみろ、っていう気分っす。……それに、男主人様だったら、氏族長や敵軍兵士も簡単に口説き落としそうっす」
【男主人】「2人とも、ありがとう……」
【射手男】「お礼を言うのはまだ早いっす。全てが終わってから、言って欲しいっすよ」