第138話『射手男が、手紙を読んでいた』
■森林と調和の国:“棘”の集落(特務隊天幕)
【射手男】「…………」
SE(紙を強く握る音):クシャ……
【男主人】「ただいま。いるのは、射手男だけか? ……ん? それは手紙か?」
【射手男】「っ! 男主人様、おかえりなさいっす。団長とのお話は終わったっすか?」
【男主人】「ああ、とりあえずね。2人にも話しておこうと思ったんだけど」
【射手男】「騎士娘は、お茶をもらいに行っただけなので、すぐに戻ってくると思うっす」
【男主人】「そうか、じゃあ少し待とうか」
【射手男】「ちなみに、これは恋人からのラブラブ便りっす! 男主人様がどうしてもっていうなら、幸せのおすそ分けをしてあげるっすよ?」
【男主人】「いらんっ!!」
【射手男】「ほらほら、とっても可愛い文字っすよ? けど、本人はこの文字の百倍は可愛いっす!」
【男主人】「あー、何だろう……こう、唐突に《劫炎撃槌》を唱えたい気分」
【射手男】「何言ってるっすか!! しれっと、攻城戦用魔術を行使しないで欲しいっす!!」
【男主人】「大丈夫大丈夫、ぜんぜん疲れないから朝飯前ダヨ?」
【射手男】「男主人様の疲労の心配はしてないっす!」
【男主人】「じゃあ、この、軽くイラッとした気持ちをどう払拭しろと?」
【射手男】「申し訳ありませんでしたっす! 心から謝るので、その似合わない爽やかな笑顔をやめて欲しいっす!!」
【男主人】「まてぃ!! 謝る場所が違うだろ! しかも、サラっと僕に笑顔が似合わないとか言うな!!」
【射手男】「誤解っす!! 笑顔が怖いって言いたかっただけっす!!」
【男主人】「…………ふむ? まぁ、そういうことにしておくか」
【射手男】「い、命の危険を感じたっす」
【男主人】「はっははは、面白いことを言うなぁ。僕が不必要に人殺しをするわけないでしょ?」
【射手男】「も、勿論っす」
【男主人】「それに死んじゃったら、苦痛も感じないしね」
【射手男】「…………」
【男主人】「……今の笑う所だよ?」
【射手男】「あは、あははは……っす」