第134話『騎士娘は、強さを求めていた』
■森林と調和の国:特務隊野営地
【男主人】「起きてるか?」
【騎士娘】「……はい。申し訳ありません、今日は失態を晒してしまって……」
【男主人】「とりあえず、ご飯。まだ暖かいからさ」
【騎士娘】「わざわざすみません……けど、今は食欲が……」
【男主人】「無くても食べろ。これ、隊長命令ね」
【騎士娘】「そんなことでっ!?」
【男主人】「重要なことだよ。全部吐き出してからは、水を少し含んだくらいでしょ?」
【騎士娘】「え、ええ……」
【男主人】「汁物だし、味付けは薄くしたから、食べれるだけでも食べること」
【騎士娘】「(はむはむ、ずずっ)……これは、射手男が作ったのですか?」
【男主人】「いや、僕が作ったんだけど、味とか変だった?」
【騎士娘】「いえ、懐かしい味がします。干した魚で出汁をとっていますね?」
【男主人】「分かったか。東の領地の郷土料理を元にしてるからね」
【騎士娘】「もっとも我が家で作る時は、もっと安い魚で出汁を取っていましたけど」
【男主人】「ふぅん…………」
【騎士娘】「…………男主人様は……」
【男主人】「何かな?」
【騎士娘】「どうして、そんなに強いんですか?」
【男主人】「それは、どういう意図での質問?」
【騎士娘】「男主人様は、あの戦場跡を見て、まったく動揺していませんでした……知っていたんですよね。あそこが、ああいう状況になっていることを。
それを当たり前のように……受け止めた強さが知りたいです」
【男主人】「それは強さなんかじゃないよ。ただの経験と諦めかな」
【騎士娘】「経験と諦め?」
【男主人】「そう……僕は人が死んで動かなくなるを何度も見てきただけ」
【騎士娘】「何度も……」
【男主人】「そうするとね、感情の一部が麻痺してくるんだ。だから、死体を見て何も思わないっていうのは、強さなんかじゃない」
【騎士娘】「でも……」
【男主人】「それに、僕が強くなる方法を口で説明したとしても、多分、本当の意味で騎士娘は強くはなれないと思う。他人の考え方を聞くのはいいけど、それに倣うだけじゃダメだよ、きっと。
本体に戻って合流するまで、……少し時間をかけて考えて、自分なりの答えを出して欲しい」