第128話『上司と部下の父親が、歓談をしていた』
■草原と平穏の国:東公爵邸
【東公爵】「わざわざ、お出で頂かなくとも、俺を呼び出せば良かったでしょうに」
【王子様】「いやなに……今回の訪問はあくまで私的なものだからな」
【東公爵】「ほぉ?」
【王子様】「部下の実家へ食事に誘われることなんて、よくある話だろう?」
【東公爵】「まぁ、普通の上司と部下だったら無くはない話ですね」
【王子様】「ボクと副官女は、普通の上司と部下だと思ってるけどね」
【東公爵】「王子様を普通の上司と言うには些か抵抗がありますが」
【王子様】「些細なことだ」
【東公爵】「そういうことにしておきましょう。それで?」
【王子様】「それで、とは?」
【東公爵】「部下の家に食事に誘われた上司が、たまたまその部下の父親と話が合う、ということもよくある話なのでしょう?」
【王子様】「ああ、それもよくある話だね」
【東公爵】「お話を聞く前に一つ、うちの娘に可能性はありますかね?」
【王子様】「可能性ならあるんじゃない? ただ……悪いけど、ボクは長ミミ派でね」
【東公爵】「以前の俺の誘惑は功を奏してるとも言い難いし、娘には厳しい戦いになりそうだ」
【王子様】「さて、その前に片付けないといけない問題があってね。ちょっと相談に乗って欲しいんだ」
【東公爵】「お聞きしましょう」
【王子様】「今回の戦争について、どの辺りが落としどころになると思う?」
【東公爵】「ふむ、今回の戦争は絶対に負けないと仰るのですか?」
【王子様】「地の利と人の利は、こっち側にあるからね。それに男主人なら上手くやってくれるさ。
こっちの優勢であれば、ボクなりの戦いが必要になるだろ。前もって準備をしておくに越したことはないよ」
【東公爵】「それは、もっともな話ですね」
【王子様】「東公爵はどう考える?」
【東公爵】「王子様は、大陸を統一するおつもりはありますか?」
【王子様】「いいや、ボクの両手は『草原と平穏の国』だけで塞がってるからね」
【東公爵】「そういうことでしたら……」