第126話『妖艶女の行動は、怪しまれていた』
■草原と平穏の国:弟大公邸
SE(扉を叩く音):コンコンッ
【給仕娘】『給仕娘です。お時間はよろしいでしょうか?』
【弟大公】「ん、給仕娘か? 入って来い」
SE(扉の開閉音):ガチャ、ギィ、バタン
【給仕娘】「失礼いたします」
【弟大公】「まだ夜というには時間が早いな。……どうかしたのか?」
【給仕娘】「ええ、ご主人様に確認をしておいた方がよろしいかと思いまして……」
【弟大公】「話してみろ」
【給仕娘】「先ほど、新入りのメイドが、廊下に佇んでおりました」
【弟大公】「そのメイドに何か問題があるのか?」
【給仕娘】「いえ、問題があるかどうかは明確には分かりません。本人が言うには、誤ってこの区画に入り込んだ……と申してましたが、違和感が少し」
【弟大公】「そのメイドの身元は? 誰の縁者だ?」
【給仕娘】「それが……侍従長の元情婦らしく、それとなく侍従長本人に確認を入れましたが、新入りの説明に嘘はないようです」
【弟大公】「ほう、あいつもお盛んだな。私なぞ、お前1人で精一杯だというのに(抱き寄せ」
【給仕娘】「ふふふ、お戯れ言を……“今”はワタシ1人を持て余しているだけでしょう?」
【弟大公】「それで、私はどうすればいい?」
【給仕娘】「何もしない方がよろしいかと」
【弟大公】「そうなのか? どうせ小娘1人、お前ならば殺すのは造作もないだろう?」
【給仕娘】「空を突いて遠くにいる龍を呼び寄せるほうが問題です。何も焦る必要はありません。毒で死なぬ龍とはいえ、生き物である以上、死の腕からは逃がれられませんから」
【弟大公】「そうかそうか、お前に任せておけば安心だ」
【給仕娘】「ご理解頂けまして、嬉しく思います」
【弟大公】「話はそれだけか? ならば、そのメイドの件は頼んだぞ」
【給仕娘】「はい、かしこまりました」