第123話『騎士娘は、許しを求めていた』
■草原と平穏の国:草原軍野営地
【騎士娘】「騎士娘です。男主人様はいらっしゃるでしょうか?」
【男主人】「いるよー。何か用があるなら入っておいで」
【騎士娘】「突然失礼します。……ん?」
【男主人】「ああ、これ? 今日の補給でワインが入ったんで、寝る前にちょっとね。それで何かあったの?」
【騎士娘】「あっ、その、申し訳ありません。軍務ではなく、私用なんですが……」
【男主人】「私用? まぁ、構わないけど……その辺りに腰掛けて」
【騎士娘】「ええと……先日のことを謝罪させて頂きたく、……誠にご無礼致しました!(深々」
【男主人】「んーと? 何のことについて、僕は謝罪されているんだ?」
【騎士娘】「それはその勝手に服を脱ごうとした件について……です」
【男主人】「あ~……いや、困ったといえば困ったけど、別に害がなか……射手男に弁解するのが面倒だったけど……それくらいだし」
【騎士娘】「いえ! 私は噂の話を理由に、男主人様の名誉を傷つける行為をしたのです。男主人様が寛容だとしても、自己満足かもしれませんが、私は自分が許せないのです」
【男主人】「と、言われても……そもそも、僕が本当に噂通りに好色な男だったら、どうするつもりだったの?」
【騎士娘】「勿論、身を委ねた上で、しかる後にそれなりの対応をして頂ければ、と考えていました」
【男主人】「…………」
【騎士娘】「何分幼い頃から剣術一筋で……色恋沙汰には見向きもせず、気づいたら、この歳になっていました」
【男主人】「親から縁談の話とかは来なかったの?」
【騎士娘】「私の家では、幼い頃から『何事も自分で決断すること』が家訓とされているのです。その中には、自身で結婚相手を探すことも含まれています。勿論、親に相談すれば、それなりの人を紹介されたでしょう。
自分で言うのもなんですが、私には剣士としての才能が合ったようで、王都での剣武会でもそれなりの成績を残しています」
【男主人】「と、言われても……なんで僕だったのさ?」
【騎士娘】「こう言っては何ですが、男主人様は強く、かつ家柄も私の家と比べれば格が上であり、申し分ありません。
難を言えば、好色という噂でしたが……しかし、女性を大事にするという噂どおりなら、一応、私も女ですから……
私は別に愛を求めているわけでもなく、夫には何か尊敬できる所がいくつかあれば、それ以上を望みませんし……」
【男主人】「なんとなく分かった気がするけど……う~ん……ああ、せっかくだから、騎士娘も飲むのに付き合ってよ。それで謝罪を受け入れるよ。一人で飲んでるのも、少し寂しくてね」