第120話『射手男が、信念を語っていた』
■草原と平穏の国:馬車の中
【射手男】「ちょっといいっすか?」
【男主人】「ん? 何かな?」
【射手男】「昨日のことっすけど……男主人様は、騎士娘もすでに篭絡済みっすか?」
【男主人】「ぶっ……それはない!! そもそも、僕は噂されてるみたいな凄腕のナンパ師じゃ、決してないからな……」
【射手男】「けど、昨日おれが天幕に入った時の雰囲気はかなり桃色だったっす!」
【男主人】「ドライアードだ」
【射手男】「…………?」
【男主人】「…………(汗」
【射手男】「(ぽむっ)……『気のせい』と『木の精(霊)』を掛けたんすね! スゴイっす!」
【男主人】「そうやって説明されると、そこはかとなく惨めな気持ちになるな……その本気で尊敬しているような目が僕の心を抉る……」
【射手男】「褒められて凹むなんて、変な男主人様っす」
【男主人】「なんて言うか、君に言われたくはないけどね!」
【射手男】「それはともかく……騎士娘も篭絡するっすか?」
【男主人】「しないっ!! 人の話をよく聞け! 僕は別に女性を見れば挨拶のように口説く女好きでも、権力を盾に関係を迫るような好色魔でもないからな!」
【射手男】「それが本当なら、噂と全然違うっす」
【男主人】「なんでそんなに噂通りの僕に夢を見る!! この間聞いた限りだと、なんかもう人間としてダメな部分も多かったぞ!!」
【射手男】「人には出来ないことをやってしまう人を英雄と呼ぶっす。そこに憧れるっす」
【男主人】「……ところで、なんで、そんなに騎士娘のことを気にする?(ニヤニヤ」
【射手男】「なんていうか、騎士娘とは、おれが入隊してからだから、結構付き合いが長いっす。昔から、剣術バカの訓練バカでバカ代表で、傍から見てて危なっかしいっす」
【男主人】「バカ代表って……射手男、興味から聞くんだが、それは愛情なのか?」
【射手男】「違うっす。なんていうか、路地裏で近所の子供の面倒を見る、みたいな気持ちっす」
【男主人】「ふ~ん」
【射手男】「それに、おれには結婚を約束した恋人がいるっす」
【男主人】「はっ?」
【射手男】「色々考えたけど、おれは名誉より勝敗より生きて帰る方が大事っす」