第119話『名誉について、問い掛けていた』
■草原と平穏の国:草原軍野営地
【騎士娘】「……と、以上が特務隊の概要となります」
【男主人】「つまり、今回の戦争に対して、僕の思う通りに部隊を動かして良くて、いざと言う時は中隊規模の人数を動員でき、各種手続きは事後承諾で構わない、ってことかな?」
【射手男】「大雑把にはその通りっす。さすが男主人様、要点ばっちりっすね!」
【男主人】「ずいぶんと思い切った権限を与えてくれたなぁ……」
【騎士娘】「それだけ期待されているという事です。名誉なことではありませんか?」
【射手男】「そうっすよ! おれも男主人様の補佐に抜擢されただけで、とても名誉なことっす!」
【男主人】「名誉ねぇ……」
【騎士娘】「何か思う所が?」
【男主人】「ん、いや……2人に訊くけど、“名誉ある敗北”と“名誉なき勝利”なら、どっちを選ぶ?」
【騎士娘】「もちろん、“名誉ある敗北”を選びます」
【射手男】「あー、おれは、勝つ方が嬉しいので“名誉なき勝利”っす。『勝てば正軍、負ければ賊軍』っす」
【騎士娘】「なっ! 騎士たる者、いかなる時も名誉を損ってはいけません!」
【射手男】「そうは言っても、勝負に勝たなければ、結局は『負け犬の遠吠え』っすよ?」
【騎士娘】「くっ、騎士の名誉と犬のケンカを一緒にするとはっ!!」
【射手男】「そこまでは言ってないっす! それに、おれはどこからも叙勲は受けてないから、騎士でもないっす!!」
【騎士娘】「むむむ……男主人様! どちらが正しい回答なのですか!?」
【射手男】「おれの意見の方が正解っすよね!?」
【男主人】「……まぁ、2人とも落ち着いて……これは別に、どっちが正解というわけじゃないから。あえて言うなら、どっちも正解で不正解ってところかな」
【射手男】「正解で不正解っすか?」
【男主人】「うん、2人ともの意見は正しいよ。例えば騎士娘は、名誉と誇りだったら、どっちを優先する?」
【騎士娘】「……どちらか一方だけとも言えません」
【男主人】「射手男は、命と勝利なら、どっちを優先する?」
【射手男】「死ぬけど勝つのか、負けて生き延びるのなら、むむむぅ? 難しいっす……」
【男主人】「まぁ、そういうこと、かな?」