第114話『そして、同盟は締結していた』
■草原と平穏の国:男主人邸(地下室)
【男主人】「貴女の理想とする国に、平穏はありますか?」
【鉄皇女】『…………』
【男主人】「幼い少女が、悲しみに涙を流すことがない国となりますか?」
【鉄皇女】『…………』
【男主人】「10人いれば、10人が求める幸せがあるでしょう。10人全員が幸せを得ることは難しいかもしれません。けれど、人に不幸を与えることは簡単です。
もう一度訊きます。貴女が行く道に、平穏はありますか?」
【鉄皇女】『あるわ』
【男主人】「…………」
【鉄皇女】『ワタクシが目指す理想の末に、平穏はあるわ』
【男主人】「それは、貴女1人の平穏ではなく?」
【鉄皇女】『男主人殿に聞くけど……「草原と平穏の国」は、その名の通り平穏なのかしら?』
【男主人】「……いいえ、平穏であれと願いを込められた私たちの国も、本当の意味で平穏だった時代はないでしょう」
【鉄皇女】『それは、どうしてかしら?』
【男主人】「人には欲があるから……幸せを求めてしまうから」
【鉄皇女】『さっきも言ったけれど、人から争いは無くすことはできないわ。ただし、その争いを抑えることはできるはずよ。
些細な争いを起こして、大きな争いを避ける。私は、恒久的な平和に興味はなく、争いの中にこそ平穏があると考える』
【男主人】「……それが、貴女の考えであり、貴女が進む道、なのですね?」
【鉄皇女】『ええ、その通りよ』
【男主人】「…………」
【鉄皇女】『今のが最後の質問で良かったのかしら?』
【男主人】「はい」
【鉄皇女】『そう、答えを聞かせていただける?』
【男主人】「同盟を組みましょう」
【鉄皇女】『その答えを待っていたわ。それじゃあ、同盟の詳細について少し話をしましょうか』