第112話『鉄皇女が、同盟を提案していた』
■草原と平穏の国:男主人邸(地下室)
【鉄皇女】『では、挨拶はこのくらいにして、本題に入りましょう』
【男主人】「そうですね」
【鉄皇女】『まず、ワタクシの目的は男主人殿との同盟を組むこと』
【男主人】「同盟?」
【鉄皇女】『仲良くしましょう、と言うことよ』
【男主人】「今、私たちは国同士が戦争をしているのはご存知ですか?」
【鉄皇女】『もちろんよ。でも、それは別にワタクシと男主人殿が仲良くしてはいけない理由にはならないわ』
【男主人】「さて、私はその言葉どおりに受け取っていいものやら」
【鉄皇女】『ワタクシも男主人殿も今回の戦争を、早く終わらせたい……という意味では同志となりえると考えているの。いかがかしら?』
【男主人】「……もう少し詳しくお話を聞きましょう」
【鉄皇女】『今回の戦争も、7年前の戦争も、どちらもある人物の意思によって引き起こされている、と言ったら信じられる?』
【男主人】「その質問は無意味でしょう。少なくともこの状況では、私がその話を信じられなくとも、貴女が信じていることを私も信じざるをえないですからね。そして、この話の流れからすれば、その黒幕は……」
【鉄皇女】『賢い方は好きよ。ええ、その考えは多分間違えていないでしょう。現皇帝……ワタクシの父親が、すべての黒幕よ』
【男主人】「…………」
【鉄皇女】『ふふっ……話の途中で気づいたって顔ね』
【男主人】「……貴重な情報、でしょうね。それを私に伝えて、貴女は何を得ようとしている?」
【鉄皇女】『この国よ。……お父様でも、兄たちでもなく、この国をワタクシの物にするのよ。そのための力と準備は蓄え終わっているわ』
【男主人】「クーデターでも起こす気ですか?」
【鉄皇女】『その表現はあまり好きじゃないのよね。クーデターだと、少し野粗な感じがしない? ワタクシが行なうのは、新しい世代による古い世代の淘汰よ』
【男主人】「…………」
【鉄皇女】『ここで、男主人殿と同盟を組む利が生まれるわ。ワタクシが事を起こした場合、出征した鉱山軍の一部に強い混乱が生じるはず、そこを上手く対処して欲しいの』
【男主人】「話が少し一方的過ぎませんか?」
【鉄皇女】『では、そちらの話も聞かせてもらおうかしら? 考える時間は必要?』
【男主人】「いえ……時間は必要ありません、いくつかだけ、質問を……」