第111話『秘密の会談が、始まっていた』
■草原と平穏の国:男主人邸(地下室)
【鉄皇女】『やっとお会いできましたわ。“救森の魔術師”殿』
【男主人】「お初にお目にかかります、鉄皇女様。その通り名は私には過ぎた名です。男主人とお呼びください」
【鉄皇女】『では、男主人殿、と』
【男主人】「失礼ながら、もう1つ宜しいでしょうか?」
【鉄皇女】『何かしら?』
【男主人】「この魔術が偽装ではないことの確認に、そちらにいる部下男に一つ質問をさせていただきたい」
【鉄皇女】『ふふふ、どうぞ? 部下男さん、こちらへ』
【部下男】『男主人様、なんでしょう?』
【男主人】「確認のためだ、質問に答えてくれ……お前の初恋の相手は誰だった?」
【部下男】『ぶはっ、こんな時になんて質問をしてくれるんですか!!』
【男主人】「いいから答えろ、答えられないなら、この通信は偽装だと見なすぞ」
【部下男】『貴方と言う人は……!! 近所に住んでいたお下げ髪が可愛い農夫娘ちゃんです!!』
【男主人】「ああ、やっぱりか」
【部下男】『!?』
【男主人】「うん、もう分かったから鉄皇女様と代わってくれ」
【部下男】『くっ……』
【鉄皇女】『…………くすくす、面白い主従ね』
【男主人】「楽しんでいただけたようでしたら、何よりです」
【鉄皇女】『部下男殿には、何人くらい初恋の方がいるの? “安全、注意、危険”として、3人くらいいれば十分かしら?』
【男主人】「……いや、これは失礼を」
【鉄皇女】『いいえ、むしろ、男主人殿が慎重なようで嬉しいわ。あ、そうそうワタクシは別にアナタからの忠誠を誓われている訳でもないし、そんなに畏まらなくても結構よ』
【男主人】「ではお言葉に甘えて……しかし、よく分かりましたね」
【鉄皇女】『だって、ワタクシも同じような手段を使っていますもの。似たもの同士なのかしら?』
【男主人】「似たもの同士、ですか? 僕としては正反対だと思いますが」
【鉄皇女】『性別も立ち位置も考え方も逆かもしれないわね。でも、ワタクシは、何かアナタと通じるものを感じただけよ。もちろん、さっきの合言葉とかね?』
【男主人】「では、次回からはもっとバレにくい合言葉を用意しておきます」
【鉄皇女】『ええ、そうした方が良いわね、きっと』