第107話『月が綺麗な晩に、想いが交わっていた』
■草原と平穏の国:男主人邸(裏庭)
【男主人】「…………こんな夜更けに何をやってるの?」
【長ミミ】「月を……」
【男主人】「月?」
【長ミミ】「何だか寝つけなかったので、月を眺めに出てきただけです」
【男主人】「そうか……」
【長ミミ】「…………」
【男主人】「…………」
【長ミミ】「……ご主人様、もし、私が……」
【男主人】「ダメだ」
【長ミミ】「…………まだ、何も言っていませんけど?」
【男主人】「うん……長ミミも一緒に戦場に連れていって欲しい、と言うなら拒否するよ」
【長ミミ】「どうしてですか?」
【男主人】「……戦場には魔術兵として付いていく、って言うんだろう?」
【長ミミ】「…………」
【男主人】「君との約束を1つ思い出したからね。君が誰かを殺すなら、僕が代わりに殺すって、約束」
【長ミミ】「やっと、気付いてくれたのですか?」
【男主人】「まあ、その返事を聞くまで確信できてなかったけどね。うん、だって、見た目も名前も全然違うじゃない?」
【長ミミ】「ご主人様と分かれてから7年ですよ? 7年もあれば、乳飲み子が親の手伝いだってできる年になります。
私の氏族では15歳で社会的に成人として認められます。そして、成人として認められると、子供の頃の名前を捨て、新しい名前をもらうのです。
この名前は……短い間、本当に僅かな間だけ、私の姉だった人のモノをもらいました」
【男主人】「姉……だった?」
【長ミミ】「生れた時から体が丈夫ではなかったそうです。20年――エルフの寿命を考えれば、ありえないほどに短い生涯でした」
【男主人】「そう……あの時のあの人が……ただ、同名なだけかと思っていたよ」
【長ミミ】「…………」
【男主人】「…………」
【長ミミ】「ご主人様……いえ、魔術師さん」
【男主人】「なに?」
【長ミミ】「魔術師さんは、また……私を置いていくんですか?」