第11話『その頃、男主人が活躍していた』
■草原と平穏の国:悪領主邸
【男主人】「(ゴクゴク)ほうほう、この葡萄酒は美味しいですね」
【悪領主】「そ、そうでしょう。領内でも特に厳選された葡萄酒ですからね」
【男主人】「ところで、もう一杯頂いてもいいです?」
【悪領主】「どうぞどうぞ!」
【男主人】「グラスに注がなくても結構。そうですね、そちらのグラスのをもらえません?」
【悪領主】「は、いや、こちらはワタシの飲み掛けで??」
【男主人】「いえ、なに…………僕は混じり物がない方が良いので、特に“毒味”はあまり好きじゃないですし」
【悪領主】「なっ!?」
【男主人】「入っていたのは、黒鈴蘭の根あたりが妥当かな、お手軽で無味無臭の神経毒」
【悪領主】「な、何を仰ってるのでしょう?(汗」
【男主人】「そんなに緊張してちゃ、奇襲は成功しませんね。大方、僕のグラスにだけ塗っていたんでしょう?」
【悪領主】「……ですから、男主人殿は一体何を?(汗」
【男主人】「結論から言えば、僕に普通の毒は効きません、魔術によって中和できますから。いつまで待っても無駄ですよ」
【悪領主】「魔術!? 詠唱は何時の間に行なった!?」
【男主人】「さぁ、僕がその質問に答える必要はあります?」
【悪領主】「ぐっ……」
【男主人】「今回の筋書きとしては、『監査担当の者は、領地に入る直前に不幸にも盗賊の餌食になった』とか?」
【悪領主】「…………」
【男主人】「罪状については、とりあえず、殺人未遂で良しと。後は余罪で何回分の極刑になるやら」
【悪領主】「…………」
【男主人】「大人しくなったな? 大体こういう時は命乞いをされるか…………っと」
SE(金属音):キュッイン
【悪領主】「くそっ…………」
【男主人】「実力行使に出てこられると。まぁ、こっちの方が手っ取り早いけど」
【悪領主】「いまだ、かかれっ!! …………どうした、早く出て来い!!」
【男主人】「まったく、どいつもこいつも典型的な悪役の言動過ぎて、少し飽きてくるな」
【悪領主】「何が起こってるっ!?」
【男主人】「僕がすでに制圧しているからだよ。ああ、そうだ…………命乞いや実力行使はあったけど、僕を抱き込もうとする人はいなかったっけ、試してみます?」
一応のキャラ紹介。
●悪領主
【種族】:人間族 【年齢】:32歳 【性別】:男性
【一人称】:ワタシ
【設定】:
・王国西側の一地方の領主に任じられている貴族。
・何かしらの不正を行っていたらしい。