~幕間~『幼馴染』
■森林と調和の国:草原軍野営地
【師団長】「この殺伐とした日常における潤いが……はぁ」
【魔術師】「……そのわざとらしい溜息は、僕への当て付けですか?」
【師団長】「いやいや、キミの判断は正しいよ。うん、こんな場所にいつまでも子供がいるのはよろしくない。まったくもって正しい判断だ」
【魔術師】「含みがある言い方ですね。はっきり仰ったらどうでうすか?」
【師団長】「キミ、あの子を迎えに行くつもりはないだろう?」
【魔術師】「!!」
【師団長】「理由は簡単、キミはあの子をあの集落の親戚に“預けた”んじゃなくて、キミ自身から“遠ざけた”からだ」
【魔術師】「そんなことは……」
【師団長】「絶対にない、とは言えないだろう?」
【魔術師】「……ええ、そうですね」
【師団長】「もっと、説明してやろうか? キミは、一度身内と決めた人間には優しい……というか、優し過ぎる。
問題は、その優しさが独善的になりがちな所だ。たしかに、幼ミミちゃんはあの人たちと一緒にいるのが客観的にもっともいい結論だ。しかし、客観的ということは、そこにキミと幼ミミちゃんの心情を踏まえてないよな。
おっと、先に言っておくと、君の優しさを否定しているわけじゃない。むしろ、優しさとか親切心なんていうのは、元から独善的なモノだろうからね」
【魔術師】「色々と買いかぶりすぎですよ」
【師団長】「幼馴染の欲目ってヤツだ。もっとも、ボクはキミと幼ミミちゃんが喧嘩をしたら、断然幼ミミちゃんの応援をするけどさ」
【魔術師】「大丈夫ですよ。もう喧嘩をする機会もないでしょう」
【師団長】「おいおい、下手な遺言みたいに聞こえるぞ」
【魔術師】「縁起でもないこと言わないでください!」
【師団長】「戦場で、未来を語ると死ぬんだぞ。気をつけろよ?」
【魔術師】「娯楽小説の読み過ぎですよ。実際に死ぬ時は、さっくり死ぬのが世の常でしょう」
【師団長】「何を言う、ボクはこんな男くさい場所で死ぬのはゴメンだよ。老衰で美女に囲まれて死ぬって決めてるんだ」
【魔術師】「思いっきり未来を語ってますよね?」
【師団長】「おっと、今のは心の中にしまっておいてくれ、ボクとキミとの秘密さ」
【魔術師】「誰に言うつもりもありませんから、むしろ言いたくないですから、そのバッチグーというアイコンタクト代わりにウィンクとか止めてください」