第104話『戦いに行く覚悟を、決めていた』
■草原と平穏の国:王宮(王子執務室)
【王子様】「ふぅ、何とか、ここまで来たな」
【男主人】「明日の王宮議会で、弟大公の辞任に追い込めますね」
【王子様】「それだけで、表立った力の何割かは削れるだろう」
【男主人】「油断は禁物ですけどね」
【王子様】「おいおい裏の権勢も削っていくさ……それより、先に考えるべきことがある。気持ちは変わらないのか?」
【男主人】「第十一師団……いえ、僕が戦場に向かいます。命を奪う必要があるならば、力を振るいます」
【王子様】「東公爵からは、第九師団をお前と一緒にという提案が出てる」
【男主人】「あの人は…………」
【王子様】「婿殿は大変だな」
【男主人】「婿殿言うな!!」
【王子様】「……今、本気でツッコんだな」
【男主人】「いや、なんかこう、イラっと……」
【王子様】「しかし、今のオマエってば、モテモテだよな。どうしたんだ?」
【男主人】「モテモテって……」
【王子様】「妖艶女に肉体関係を迫られたろ?」
【男主人】「いつものことですよ。ええ、娼館に来て女を買わずに帰るのは、酒場に来て酒を飲まないのと一緒だと……」
【王子様】「誤魔化そうとしてもムダだからな。子供が欲しいって言われたんだろ」
【男主人】「この忙しい時期に、また諜報員をっ?」
【王子様】「いや、これは本人から聞いた」
【男主人】「は?」
【王子様】「だから、妖艶女本人から聞いた。それで、オマエとの子供が生まれた場合、財産権がどうなるかとか、貴族法のアドバイスをちょっとな」
【男主人】「…………はぁ(溜息」
【王子様】「おや? まぁ、変なことは言っていないぞ? 基本的に私生児に遺産などが渡ることはないからな」
【男主人】「だからこそですよ。本気度合いが、ね」
【王子様】「ふむ……何かやったか?」
【男主人】「身に覚えはないんですけど……」
【王子様】「たとえば、チンピラから助けたとか、寒い日に一緒に買い食いをするとか、「かわいいですね」なんて言ったりとか」
【男主人】「…………? やったら、マズかったですか?」
【王子様】「え、全部か?」