第100話『妖艶女から、求められていた』
■森林と調和の国:有名娼館
【男主人】「……とまぁ、依頼の打ち合わせは、こんな所かな」
【妖艶女】「それじゃ、後はアタイに任せてもらうよ。何か動きがあり次第知らせればいいんだろ?」
【男主人】「うん、任せたよ」
【妖艶女】「ところで、さっきの事後報酬の話で一つ頼みたいことがあるんだけど、いいかい?」
【男主人】「ん? 何か要望があるの? あまり無茶は頼みじゃなければ引き受けるけどね」
【妖艶女】「そんなに無茶なことじゃないさ」
【男主人】「ふ~ん」
【妖艶女】「あのね、この仕事が終わったら、男主人様の子が欲しいんだけどさ」
【男主人】「……僕に子供はいないけど?」
【妖艶女】「そうだね、知ってるよ。ああ、アタイにもバレてない隠し子がいれば別だけどさ」
【男主人】「子供って、どこの誰が産むんだよ!!」
【妖艶女】「ん? 男主人様は子供を産めるのかい?」
【男主人】「産めないけどねっ!!」
【妖艶女】「だよな……いや、魔術で産めたりするのかと思ったよ」
【男主人】「妖艶女は、魔術を一体なんだと……」
【妖艶女】「それじゃあ、しょうがないね。アタイが産むしかないだろ?」
【男主人】「…………ちょっと待とう。話を整理したい」
【妖艶女】「整理するまでもなく、単純な話だと思うけどね」
【男主人】「まず、仕事の事後報酬の話だったよね?」
【妖艶女】「そうだね。さすがに仕事前に仕込むのはちょっと心配だしね」
【男主人】「で、妖艶女は僕の子が欲しいけど、僕に子がいないから、妖艶女が産む、と」
【妖艶女】「大雑把な筋は間違えてないな」
【男主人】「途中をざっくり無視したからね。え? そういうことなのか?」
【妖艶女】「いや、そんな質問されても分からないよ。どういうことなのかい?」
【男主人】「あー、だから、妖艶女は、何で僕の子が欲しいんだ?」
【妖艶女】「ああ、大丈夫大丈夫、財産を分けろとかは言わないからさ……なんていうか、人恋しくなるのさ。この年で一人身だとね」
【男主人】「それなら、何も……何でわざわざ僕を指名しなくてもいいだろ。そもそも冗談か? 笑う所だったか?」
【妖艶女】「不粋な質問をしてくるね。男主人様に冗談で言える話だと思うかい?」
【男主人】「…………」
【妖艶女】「確かに、子供が欲しいだけなら……そこらの孤児院からつれてきてもいいし、適当に客の若い男を捕まえて仕込んでもいいだろうさ。けどね、アタイは男主人様の子……が欲しいんだよ」