第97話『猫ミミちゃんは、変わろうとしていた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【男主人】「(ずずっ)……そういえば、2人は?」
【長ミミ】「最近、黒ミミさんは猫ミミちゃんに稽古を付けているそうです」
【男主人】「稽古?」
【長ミミ】「ええ、黒ミミさんも教え甲斐があるといっていました」
【男主人】「そうなのか……」
【長ミミ】「なかなか筋がいいようですよ。元々獣人族は身体能力に優れていますからね」
【男主人】「というか、黒ミミの専門って、アレだよな」
【長ミミ】「猫ミミちゃんの種族として、適性があるみたいですが」
【男主人】「う~ん」
【長ミミ】「どうかされましたか?」
【男主人】「いや、ちょっと複雑な気分でさ」
【長ミミ】「何事もできないよりも、できることが多いほうが良いでしょう」
【男主人】「でも」
【長ミミ】「暗殺師の技であっても、毒を知らずに解毒はできません。それに、毒も薬のうちと言うではありませんか? 結局は使う人の心次第……ご主人様がよくご存知のはずです。
それから、ご主人様は少々過保護すぎます」
【男主人】「そうかな?」
【長ミミ】「ええ、猫ミミちゃんを真綿で包むようにして、一生の面倒見るつもりですか? 多分、ご主人様が望めば猫ミミちゃんは否とは言わないかもしれませんが……」
【男主人】「うっ……でも、それとこれとは、話が……」
【長ミミ】「少し違うかもしれませんが、究極的にはそういうことです。もちろん、猫ミミちゃんが誤った道に進もうとしているならば、正してやるのは身内としての権利でしょう。しかし、猫ミミちゃんが成長しようとしているのを阻むのはどうでしょう?」
【男主人】「それもそうか…………ところでさ」
【長ミミ】「何でしょうか?」
【男主人】「もしも、僕が長ミミのことを真綿で包むように一生大事にしたい、って言ったらどうする?」
【長ミミ】「それは少々困ってしまいますね」
【男主人】「ほうほう?(してやったり」
【長ミミ】「私の方も、ご主人様を真綿で包むように大事にしたいと思っていますので(さらり」
【男主人】「…………お茶、お代わりくれる?」
【長ミミ】「はい、かしこまりました」