第94話『できることを、楽しんでいた』
■草原と平穏の国:男主人邸
【猫ミミ】「長ミミさん、大丈夫?」
【長ミミ】「ありがとう、猫ミミちゃん、お掃除とか上達しましたね。おかげで、今日はとても仕事が楽でした」
【猫ミミ】「えへへ、長ミミさんが倒れていた分、頑張ったんだよ!」
【黒ミミ】「長ミミの方こそ、病み上がりなんだ、あまり無茶はするなよ」
【長ミミ】「ええ、倒れてしまったら、また2人の負担になってしまいますからね」
【黒ミミ】「負担とか、そういう問題じゃない。もう少し自愛しろ、アタシはオマエのことを心配してるんだ」
【長ミミ】「ありがとうございます。けど、黒ミミさん、私はこうやって家事を行なえるのが嬉しいのです。ですから、私のためを思うなら、できるだけ、私が家事ができるように手伝ってください」
【黒ミミ】「そんなに楽しいものかねぇ。アタシは庭の草むしりを魔術でガーっとやるだけは、楽しいけどさ」
【長ミミ】「楽しい、と、嬉しいは、少し違います。もちろん、楽しみながら出来るなら、それに越したことはないですが……」
【猫ミミ】「あたしは楽しいよ! だって、昔は、その日一日を過ごすのに精一杯だったけど……今は、色々なことをやらせてもらってるし、教えてもらってる。料理をしたり、掃除をしたり、洗濯をするのも楽しいよ?」
【黒ミミ】「うーん、あたしはピンとこないな」
【長ミミ】「猫ミミちゃんは、メイドになるべくして生まれたような逸材ですね」
【猫ミミ】「おおー、なんかあたしって、すごいっぽい!」
【黒ミミ】「…………」
【長ミミ】「猫ミミちゃんならば、もしかしたら、100年に1人現れるか現れないかの、マスター・オブ・メイドになれるかもしれません」
【猫ミミ】「ますたー・おぶ・めいど!? なんかすごいっぽさが100倍くらいになったね!!」
【黒ミミ】「…………」
【長ミミ】「マスター・オブ・メイドは、メイド式十八般に通じており、全てのメイド式を極めたものだけが名乗ることができる称号です」
【猫ミミ】「おおお~~!! 長ミミさんも、マスター・オブ・メイドを目指しているの?」
【黒ミミ】「…………」
【長ミミ】「残念ながら、私の才能では、マスター・オブ・メイドを名乗ることはできませんでした。猫ミミちゃん、私の意志を継げるのは猫ミミちゃんしかいません」
【猫ミミ】「長ミミさん、あたしに任せて!! 必ずマスター・オブ・メイドになるからっ!!」
【黒ミミ】「…………楽しいか?」
【長ミミ】「ええ、割と楽しいかもしれません」
【猫ミミ】「うん、とっても!」